第6回 教育講演「Reference Interval(基準範囲)とその実際」(10)

5.基準範囲はどの様にして求めるのか?
 2)基準範囲設定の実際と問題点・注意点(b)


 手順1(正規の方法)
  1. 以下の者を除去
     受診中、糖尿病、炎症性疾患、肝疾患、痛風、M蛋白
  2. 全体のヒストグラムを作成
  3. 大きくはずれた値を除き、再度ヒストグラムを作成
  4. 以下の条件で区分し、ヒストグラムを作成
     年齢、性別、喫煙(1本/日以上)の有無、
     飲酒(ビール小瓶1本or酒1合/日以上)の有無
     肥満(肥満度が20%以上)の有無
     高血圧(最大血圧160mmHg以上or最小血圧95mmHg以下)
  5. それぞれのヒストグラム作成と平均値、標準偏差の算出
  6. それぞれのヒストグラムの観察、有意差の検定
 まず正規の方法です。表に示したような者を除去しました。
 受診中の人、糖尿病のある人、炎症性疾患(漠然としているが、例えば風邪をひいている人)肝疾患、痛風人、M蛋白のある人、まずこれを320数名の中から除去した訳であります。それから全体のヒストグラムをまず作成致しまして、ここで大きくはずれた値を除いて再度ヒストグラムを作成致しました。そしてその後、以下の条件で区分してヒストグラムを作成致しました。年齢、性別、喫煙(1日1本以上)としました。飲酒は、ビール小瓶1本、又は酒一合ちょっと。肥満は体重とか身長から求めた肥満度20%以上の人を肥満としました。血圧はWHO基準に則ってやりました。こう云った条件でそれぞれのヒストグラムを作成して、平均値と標準偏差を出して、まずそれを目で観察して、そして有意差の検定をしました。結果的には差がありませんでしたが、若干女性の方γ−グロブリンが高いという結果でありました。

手順の詳細を表示

 簡単に手順を示しましたが、現実にはこの人は酒飲みか、受診中であるか、といった情報を入手することが非常に困難です。うちの職員だから出来たんですけれど、そうでなければ大変です。

 そこで対象のいろんな情報を考えず異常データを除去したらどんなになるんだろうということでやってみました。
 M蛋白、白血球8000/μL以上、CRPは0.3mg/dL以上、リンエステラーゼが0.6冪H以下、TP6.6g/dL以下、Alb3.8g/dL以下、LDHが470IU以上、GOT32かつGPT29IU以上の人を除きました。私が独断と偏見で蛋白分画に影響を与える様なデータを除きました。全体のヒストグラムを作成し大きく外れた値を除去して再度ヒストグラムを作り直して平均値と標準偏差を出しました。さらに男女別、年齢別のヒストグラムを作りました。男女、年齢といった情報は容易に入手出来ますから。


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