第9回 技術講座「遺伝子診断のいろは」(2)


【基礎知識】


遺伝子の異常

DNA level:
増幅(amplification) homogeneous staining region (HSR) , double minutes,(DMs)
組換え(recombination) chromosomal translocation
点突然変異(point mutation)transcription の制御異常 (promoter 領域の異常による)
 
mRNA level:
mRNA の成熟の異常
mRNA の stabillity の異常
translation のされやすさの異常
 
蛋白 level:
産生された蛋白の機能異常と半減期の異常

 しばらく基礎の話をします。遺伝子診断といいましてもいろいろレベルがあります。まず遺伝情報の源であるDNAそのものを検査するもの。次いで、DNAからRNAになって、RNAから蛋白が作られて行くわけですけれども、mRNAレベルでの異常を検査する場合もあります。そしてさらに、蛋白発現レベルの検査もあります。
 mRNAと蛋白発現には複雑な制御機構が関与しています。DNAからmRNAが合成されることを転写、mRNAから蛋白合成されることを翻訳といいます。転写後の発現制御を転写後調節と呼び、蛋白の機能や半減期が関ります。現在大きな話題となっていますが臨床応用はまだ先のことでしょう。


T.遺伝子について

1)増幅
 不利益な遺伝子が増えるのですから直感的にも悪い状況であることが予測されます。染色体で見ますとHSRsやDMとしてみつかることもあります。染色体の構造異常を伴う場合もあります。染色体上で見つからない場合もあります。理由については後ほど説明します。

2)組み換え
 組み換えというのは、検査ではリンパ球の免疫グロブリンの遺伝子の再構成だとか、あるいはTセルレセプターの再構成という分野でよくでてくる言葉と同様の現象を指します。バーキットリンパ腫のt(8,14)、CMLのt(9,22)なども染色体転座を示しており、当然DNAの組み換えをともなっています。

3)点突然変異
 ras のポイントミュテーションは検査でよく聞きますね。ポイントミューテーションが入ることで発癌性を持ってしまう。すなわち活性型になります。ポイントミューテーションはDNA塩基配列レベルで検出します。
 「遺伝子検査が利用されている疾患」には、DNA異常と疾患の関連が分かったもののリストを作りました。「こんなにたくさんの疾患が」、あるいは、「これもそうだったのか」というな病名が沢山その中にあると思います。参考にしてください。



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