第9回 技術講座「遺伝子診断のいろは」
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それでは、本日は、「遺伝子診断のいろは」のお話をします。
テキストを何ページか作ってありますけれども、大変盛りだくさんなのでたぶん1時間では無理でして、それを飛ばし飛ばし行きます。ところで、診断学に入る前に分子生物学のもっとも基本のところを押さえておかなければいけません。始めの20分〜25分で基礎を、お話しして、その次に臨床応用をお話ししたいと思います。
【はじめに】
I.分子生物学の臨床検査への応用
疾患に特異的な遺伝子の検出を行う
異常遺伝子の検出
性の決定遺伝子の証明等
感染症では原因微生物のゲノムの証明:
迅速化と確定診断
1970年代後半から遺伝子マッピングあるいはクローニングを中心とする分子生物学が急速に進歩して参りました。その結果、ヒトの疾患に関するものでは、悪性腫瘍の原因遺伝子の同定、ウイルス遺伝子のクローニング、また、遺伝性疾患の原因遺伝子の同定、が次々と行われてきております。
そして最近では、組み換えDNAの形で、細菌、バクテリアなどで特定の遺伝子の発現も可能となりました。特に、実用化されているものにはインターフェロンなどのサイトカインや、エリスロポイエチンなどが作られ、臨床上実用化されています。
また、ワクチンとして利用するための微生物蛋白の一部などもあります。B型肝炎のワクチンも組み換えDNA技術により作られております。このような分子生物学的手法は、臨床検査の分野でも応用されるようになって参りました。
従来の検査法では、「間接証拠」であったものが、分子生物学的手法により、「直接証拠」つまり「存在証明」を得ることが可能となりました。直接証拠と云うのは、疾患に特異的な遺伝子、これは感染症、遺伝病、癌など、どんな病気であっても、我々が患っている疾患に特異的な遺伝子のことです。「感染症だったら遺伝病じゃない。だから遺伝子診断は関係ない。」と思うかもしれませんけれども、感染症であっても、その感染源となる微生物の遺伝子が存在しますのでそれの遺伝子の検出、これが診断につながります。
さらに性の決定、親子鑑定など法医学分野でも広く利用されています。
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