第6回 教育講演「Reference Interval(基準範囲)とその実際」(13)

7.基準範囲の普及に際しどのような問題点があるか?

基準範囲の普及 基準範囲の普及に際し、どの様な問題点あるかということですが、これを広めるにはまず足元から、ということであります。

図を見て下さい。患者さんが居られます。医者がいて、看護婦がいて、検査室の人間がいます。検査室ではデータがどんどん出て「うむ・・苦しい!」と云っています。苦しさが先に立ち「基準範囲が何じゃい」と考えています。・・(笑)・・看護婦と医者は患者さんに対して「あなたは基準範囲ですよ」と説明しながら、その一方で「基準範囲って何だろう。大丈夫かなあ・・」と、自分で良く判らん説明をしている訳です。患者さんは「基準範囲、何のことだろう?」「病気かな?」「この先生、大丈夫かな・・?」患者さんにとってみたら病気か正常か知りたいだけですから基準範囲なんか知ったことじゃない訳です。基準範囲という言葉は一般には混乱しますが、この様ななかでどの様に普及させていけばよいのでしょうか。

 啓蒙というのが一番大事になってくる訳ですけれども、臨床検査室での職員の啓蒙は易しい。検査室職員は身内だから易しい訳です。とにかくこつこつとデータを集積する地道な努力が必要です。それからできればカットオフ値、極異常値みたいなものを併せて設定できれば基準範囲を普及させる場合に有用じゃないかと思っております。とにかく始めようと云う事であります。
 これに対して医師・看護婦への啓蒙は難しい。正常値の慣習を破ることは難しいです。研修医に基準範囲という言葉を知っていますかとたずねたら、一級10人の研修医は誰も「知らない」と答えました。ただReference Interval という言葉は外国の文献で見たことはあると答えた人はありました。訳の判らないまま言葉だけは知っていたということであります。先ずは身近な医師に啓蒙する。仲の良い先生とか、良く検査を理解する人にしゃべる、という事ですね。検査の手引やお知らせ文に基準範囲という言葉を採用してしまう。検査センターにも協力を求めるということであります。
 報告書にどうして表したらいいかと云うことなんですけれど、年齢、生活習慣、生理的条件等で、もし基準範囲が異なった場合はすべて報告書に表すことは難しいです。これには、「検査の手引き」として表す以外今のところ手がないかなという風に思っています。
 これには基準範囲をどのようにして求めたかというのを表すことが肝要です。


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