第 4 回発表・抄録番号 2

6分画となった症例

【症 例】

分画報告書

 
泳 動 所 見βとγの間に2.1%の余剰分画。
γ分画高値、α分画、β分画低値。
その他の検査所見ALP 正常値より若干増。
トランスアミナーゼ GOT優位、わずかに異常値。
ZTT 上昇。
γ−GTP 高値。
尿酸 低値。
結 論余剰分画は、補体成分、フィブリノゲン、M蛋白の可能性がある。M蛋白様分画でないことを確認した後、免疫電気泳動や免疫固定法を実施する。

【解 説】

  1. もしこの血清が新しいとすれば、βとγの間の分画は、補体第三成分の活性型であるβ1cグロブリンではないか。セパラックスSPではよく見られるこのフラクションは、古い血清では不活性型のβ1aのほうに転換されてβ分画に加わる。セア膜で免疫固定を実施し、β1cを同定すればよいと思う。また、補体であれば、泳動用緩衝液にEDTAを添加すると出なくなる。

  2. フィブリノゲン(血漿検体)の可能性もある。セパラックスでは6分画になるが、セパラックスSPではβ位に重なり検出が難しくなる。

  3. 補体でもフィブリノゲンでもなければM蛋白が疑われる。ごく微量であろうが、免疫電気泳動や免疫固定法で確認する必要がある。

  4. この症例は、余剰分画をはずして考えてもγ分画が高く、α、β領域が低めである。慢性肝障害の疑いがある。
    トランスアミナーゼの変化、γ−GTP、アルカリフォスファターゼの軽度の上昇を考えれば、合致する所見でだと思う。長期に抗てんかん薬を服用すると肝障害を起こしてくるから、それが引き金になっているのかもしれない。
    また、抗神経薬は、IgA減少の報告があるなど、意外と免疫グロブリンの動態に影響を及ぼすことがあるということを配慮すべき。

  5. 分画報告書のβ分画とγ分画を単純に比較すると、「β分画が低くてγ分画が高い病態」となるが、ほとんどお目にかからない。2.1%の余剰分画は、M蛋白でなければ、β分画にもともとあったものではないか。

  6. 補体でもフィブリノゲンでもM蛋白でもなく、慢性肝疾患もないのにγ分画が高い理由としては、このデータだけからは判断が難しいがA/G比3.9というあたりから、脂肪肝が考えられる。ただし、γ分画が高い脂肪肝がある得るかどうかははっきりしていない。薬剤の影響があるのかもしれない。



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