Reversed CPC その2(2000年)(9)

【臨床経過(解答)】

症例 63歳 男性
  
臨床診断 アミロイドーシスによるネフローゼ症候群、橋本病
  
主訴 下腿浮腫
  
既往症 52歳時、脳出血により左片麻痺
  
現病歴1994年4月、誘因なく下腿浮腫が出現し、体重増加も認めた。近医にて利尿剤投与されたが、改善せず同年7月紹介入院となった。
  
入院時所見 意識低下、皮膚・口腔粘膜乾燥、眼瞼結膜、貧血、両下肺野に軽いラ音を聴取。肝脾、腫瘤を触知せず。
  
経過 腎生検により、コンゴ赤陽性のアミロイド沈着を認め、過マンガン酸処理による染色性の消失より、AA型アミロイドーシスと診断された。経過中に甲状腺機能低下を認め、マイクロゾーム抗体陽性から橋本病と診断され、他に慢性炎症疾患を認めなかったことから、アミロイドーシスの原疾患と考えられた。T4製剤投与により甲状腺機能は改善されたが、ネフローゼ症候群は難治でアミロイド溶解剤(DMSO)にも反応せず、アルブミン製剤投与を余儀なくされた。1995年2月MRSA(メシチリン耐性ブドウ球菌)による肺炎を合併したが抗生剤投与により軽快した。現在ネフローゼ加療中である。
  
櫻林 おおよその経過を説明します。
 63歳の男性で、入院は7月25日で3月24に退院しています。臨床診断はアミロイドーシスによる、ネフローゼ症候群と橋本病です。主訴は下腿の浮腫、既往歴は52歳の時、脳出血により左片麻痺が起こっているということです。現病歴ですが、1994年の4月に誘因がなくて突然下腿浮腫が出現して、体重増を認めたということです。近医にて利尿剤を投与されたが改善されず、7月に紹介入院で私共の病院に来たということです。
 入院時の現病ですが、全身性の浮腫がありまして、片麻痺による神経学的所見の他は特に全身的に異常はみられなかったということです。当然、腎臓が悪いといういうことになりまして、腎生検によりコンゴレッド陽性のアミロイド沈着を認めたということです。これはどういうアミロイドによるものかですけれども、先程の下条先生の仕事の内に入るかも知れませんが、過マンガン酸処理による染色性の消失から、AA型アミロイドーシスと診断された。
 経過中に甲状腺機能低下を認めて、マイクロゾーム抗体陽性から橋本病と診断され、他に慢性炎症性疾患を認めなかったことから、アミロイドーシスが原疾患と考えられた。T4製剤投与により、甲状腺機能は改善されたが、ネフローゼ症候群は難治性でアミロイド溶解剤(DMSO)にも反応せず、アルブミン製剤投与を余儀なくされた。1995年2月MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)による肺炎を合併したが、抗性剤投与により軽快した。現在外来でネフローゼ症候群を中心に加療中である。


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