松尾 | 私はだいぶこれで把握できました。検査データの読み方について振り返ってみたいと思います。先程、出てきたキーワードにネフローゼ症候群と甲状腺機能低下症、これはよろしいですね。それから、ネフローゼ症候群はアミロイドーシスが原因であると主治医が判断しました。しかし、甲状腺機能低下症を橋本病と診断した根拠がもう一つ分からないですね。違うかもしれない。実はアミロイドの沈着というのは、甲状腺には起こり易いものです。ですから橋本病と原因したところには少し疑問が残るから、これをはっきりする必要がある。でマイクロゾーム抗体が200倍というのは特異性のない所見ですので、ひっかかるところです。これは帰ってから主治医と相談されるということです。原因はそういうことが考えられます。 それから敗血症は、有ったのか無かったのか、少なくとも明かなものはなかったようです。このデータの読み方について先程の微生物やられている方どうでしょうか。動脈血から菌が出たとか、IVHのカテーテルから出たというのはそこに、コロニーゼイションがあったというか考えられるでしょうけれど、臨床所見から併せて考えると検査からは。 |
参加者 | IVHから出たということは、これを抜くと敗血症は改善されるんですね。 |
松尾 | いわゆる本当の敗血症でなくて、一過性の菌血症ということです。どこかの臓器にフォーカスがあってという意味じゃなくてということですね。それから腎不全があるということについてはよい訳ですね。クレアチニンとBUNにギャップはあるけれども消化管出血はなかったということです。それから貧血ということですが、これは消化管出血はなかったようですから、二次性の貧血というデータの読み方になる訳です。これはよいですね。 次、肝臓ですね。一回しかデータがありませんから解りませんけれども、肝臓にアミロイドの沈着は起こり得ます。全体の症例の半分から7割と言われています。アミロイドはどこに沈着するかと申しますと、先程、肝臓の小葉を書きました。これを拡大して書きますと、肝細胞索が二列になっています。この間を胆汁が流れる訳です。これを類洞と言いまして、ここに沈着致します。程度にもよりますが、肝細胞を圧迫することがあります。胆道系酵素上昇の原因としてそれもある訳です。生検をしていないので分かりませんが考えておく必要があります。 |
櫻林 | γ-GTPはそうなんですが、ビリルビンはどうなんでしょう。 |
松尾 | ビリルビンは初期の間、上がらないこともあります。意外とその時にはGOT、GPTは不思議に上がらないです。本当は出ているんだと思いますが、クリアーされているだけかも知れません。 データの読み方で大きなところはそうなりますが、細かいところで好酸球増加炎症所見ということですね。これをどう捉えるかですね。敗血症がないということは分かりますが、先生、CBCの読み方はどう考えたら良いでしょう。 |
櫻林 | 2月15日のCBCですね。一つ疑問なのはリンパ球の1%で、こんなこと起こって良いのかなと思います。どこかの間違いではないか。 |
松尾 | 実はたまたま北海道に呼ばれてCPCをやったときに、肝臓のアミロイドやったので、これだけサラサラと言える訳です。その症例もリンパ球1%、レフトシフトがあって好酸球増多なんです。結局は解決できずに事実だけにしておきましょうということになりました。リンパ球が低くなるのは、一般的に患者さんの状態が悪くなって、免疫の状態が落ちた時という位しか教科書に書いてありません。後は明確なこと書いてありません。他に自己免疫疾患の時に、リンパ球が減るということは書いてありますが、詳しい記事は知りません。病態というのはCPCについて把握出来ません。膀胱炎のことについて、微生物検査をやっておられる方いかがですか?膀胱炎があるとコメントされましたよね。 |
参加者 | 臨床と合わないというのは何とも言えないんですが、尿路の感染症としたのはワイッセがあって菌量×105以上ということなんです。 |
参加者 | ただその割にはCRPは高くないですね。もうちょっと上がっても良いと思いますが。 |
松尾 | 膀胱炎の場合は普通CRPは殆ど上がらないですね。 |
山本 | 尿のpHなんですが、私、検尿とか普段やってないので何とも言えないですが、細菌感染があると確かアルカリに傾くという記憶があったんですが、これ実際酸性ですね。その辺どういうふうに解釈したら良いか教わりたいです。 |
松尾 | そうですね。ちょっと分かりませんね。他、如何ですか。 |
青木 | やはり気になるのは肝のトランスアミラーゼなんですが、全然動いてないですね、この患者さんは。それが何故なのか。少なくともγ-GTPとかアルカリフォスファターゼがこれだけ上がった時に全然なんでもないというのは、普段データを見ていて経験しないですね。 |
松尾 | 確かにそうですね。 |
青木 | それから腎盂腎炎は却下ですか。 |
松尾 | 腎盂腎炎は却下できると思います。何故却下できるかと言いますと、CRPの上がりが小さいということと、MRSAが腎盂腎炎をおこすということは殆どないということですね。という理由で99%否定できると思います。まだ時間ありますが如何でしょう。 |
櫻林 | 甲状腺機能低下がアミロイドーシスによって起こっている可能性が高いということになると、矛盾することがあります。この患者さんは甲状腺粉末(チラージン)を投与されて、甲状腺機能が改善されたとかいてあるんですが、それは可逆性病変ということになる。要するにアミロイド沈着だったら治る訳ないですから、甲状腺機能低下は改善されないんではないかと思う。 |
松尾 | されないですね。アミロイドだったら。 |
櫻林 | データ上改善されたということであって薬剤を投与すれば改善されたデータが出てきてしまう。そういう記述なのかちょっと分からない。 |
松尾 | 実際には生検までされるのかどうか分かりませんけども・・・。皆さん納得しないところは聞いて下さい。 |
山本 | IVHをされる状態に何故なっていたかということが分からないですが。 |
松尾 | 残念ですが、私も分かりません。感染の機会が多いから普通は大腿部からIVHしないです。 |
青木 | これアミロイドーシスだからアミロイドの沈着をなんとかしないことにはネフローゼ治らないですね。そういうことではないでしょうか。 |
松尾 | その通りです。AAのアミロイドというのは予後は良い部類に入りませんね。アミロイドにも色々ありますけれど。 先生よろしいでしょうか。分からない所があって申し訳ありませんが、勉強になったと思います。これで終わらせて頂きます。 ありがとうございました。(拍手) |