櫻林 | 今までのディスカッションのなかできちんとしておかなければいけないことが、幾つかあると思うんですが、まず最初に尿蛋白の(3+)というのはいったい何でおこったかということを議論しなければいけないと思う。それは教科書的には(3+)は強い蛋白である。それが持続されているかどうかというのが、非常に大事なんですが、その時点で病態を3つか、4つ上げておいて、その中に何が当てはまるか、ということをまず議論すべきだったかもしれません。もう話が進んでいますので、TPが3.8で特に蛋白分画で大事なのはα2分画の増加とγ分画の低下ですから、これは先程、松尾先生が言われたように、「と思う」どころではなく、どう考えても典型的なネフローゼ症候群のパターンです。従って血清蛋白分画からこの尿中の(3+)というのはネフローゼ症候群によって起こっている蛋白尿であるということになるわけです。ここで足りないのは一日どれくらいの蛋白が出ていたかということです。それがまったく欠如しているのが一つと、ネフローゼ症候群だとするとなぜおこっているのかです。 |
松尾 | そこです。 |
櫻林 | そこですね。それがまず第一点の問題と、それからここまでデータが出ていながら何故甲状腺機能低下があって、Free T3が測ってなかったかという問題が一つあるんですが、例えばうちはもうT3、T4ほとんどやってないですけれども、FT3がないということと、甲状腺機能低下の可能性は極めて高いですが、その甲状腺機能低下症の原因はいったい何か、データが出ているではないか、何故抗マイクロゾーム抗体と、この機能低下を一緒にしなかったかということですね。一緒にすればどいう病気が出てくるかというと、自己免疫性甲状腺機能低下ということになるわけですから、その典型的な病気がこうだということが分かる訳ですね。それが第二点です。それから、細かい話もあるんですが、もう二つあります。 95年2月15日のBUNの増加とクレアチニンの増加で、クレアチニンの増加というのは先程もお話が出ていたように、腎機能障害、典型的な筋ジストロフィーとか、交通事故の座滅とかいう、筋肉の急激な壊死以外には、あり得ないというのが教科書的ですから、1.5mg/dLは明かに増加している訳でその観点でもって考えるべきである。 便の潜血反応が陽性というのは、先程も問題になっていますが、94年のレベル、6年前の話ですからひょっとすると、モノクロナル抗体を使ったヘモグロビンの検出ではなくて、化学的試薬かということになりますと、便からの出血が起こっていたかどうかあやしいということになります。先程、青木さんがバランスが違うんではないかということもありますけれど。 もう一つ、尿酸が、7月12日からすでに高い訳です。この尿酸の高さは腎機能と関係有るのか無いのかということです。 尿素窒素、尿酸、クレアチニンの3つのデータから見ていると、ただ単なる高尿酸血症であって、腎機能と関係ないということも言えると思いますし、そうでないかもしれないということになると、2月15日の半年後に尿酸値が高くなっていることから考えると、腎機能障害として尿酸が高くなっているとなると、1.5mg/dL以上に上がっていたのかもしれない。そうなるとBUNとのバランスは、それ程問題にならないかもしれない。BUN上昇から消化管出血を考えるのは大事であるが、先程の便潜血反応の方法が化学法だとすると、少なくとも消化管への大量出血は考える必要はないのかもしれない。 それからもう一つは、MRSAの問題ですが、この患者で問題なのは確かにIVHカテーテルであって、IVHカテーテルを長期に渡って留置しておいた可能性があって、管理がうまくいかなかったためにIVHのカテ先に外からMRSAが入り込んで、それが敗血症になっているというか動脈血の中にMRSAが検出できたということになる訳です。ただこの患者は鼻腔もMRSAですし、最初はMRSAの保菌だったと思うんです。それがIVHがたまたま長期留置されたために、敗血症になってきたと思いますね。尿にも105位出てくることがあって、これが起因菌で膀胱炎をおこしているのではという例は、我々も経験ありますが、意外と尿路系の炎症をおこしてないことが多く、保菌的であった症例が結構あります。 また、肝機能障害ですけども確かにγ-GTPは誘導酵素でありますから、アルコールとか薬剤によって陽性になってきます。もし薬剤肝障害だとすると、もう少しトランスアミラーゼが上がってきても良いはずです。これがこの半年間でほとんど上がってこない。ただLDHは議論されていませんが高いですね。そこら辺が薬剤肝障害かどうかの一つの分岐点になるか、またトランスアミラーゼの変化から見ると、薬剤肝障害とは決して言えない気がする。そこら辺のディスカッションもうちょっとやって頂きたい。 |