Reversed CPC その2(2000年)(6)

【経過を追って(2)】

松尾 次にいきましょう。
 難しいと他の方もおっしゃいましたけど、γ-GTP、アルフォス、ビリルビン、GOT、GPT、LDHこのデータの読み方について、福田さんでしたか、肝胆道系の異常とおっしゃいましたが。
青木 私そういうふうに言いましたけど、福田さんは薬物性と言われたんですね。私もそれが近いと思います。すみません。ある種の薬物によって肝臓のマイクロゾームの酵素誘導が起こりますのでそちらの方が考え易いです。
松尾 他、如何ですか。胆道系、肝胆道系と色々な言葉がありますので、言葉の定義をハッキリしましょう。(絵を書く)胆道系というのはファーター乳頭という十二指腸に注ぐところから肝臓の中へ入って行きまして、肝臓の中には小葉がありまして、グリソン、小葉中心静脈、肝細胞索が並んでいます。これをさらに大きく書くと2列に肝細胞が並んでいます。この間を毛細胆管と言います。この管を胆汁が排出され流れていきます。実は胆道系というのはかなり広い意味がありまして、外科的黄疸と言われ手術の適応となるここの部分も胆道ですし、肝細胞に挟まれた毛細胆管も胆道です。毛細胆管の障害はほとんど薬物で、細胞の障害というのは肝細胞そのものを言うわけです。ですから肝機能、肝臓の細胞の障害、胆道系の障害というのを解剖学的にしっかり使い分けたら大きく間違えることはありませんから。
 それでは最後に培養の読み方について、敗血症であると読まれたように思いますが、青木さん如何ですか。
青木 良く分からないんですが、動脈血中にMRSAがあるということは、菌血症になっていると単純に考えました。
松尾 どこから採血したか後で聞きましょうか。微生物検査をやっておられる方いますか。正直に手を上げて頂いたら本当にうれしいんですが。(笑)
参加者 カテーテルから出てます。ということはここから敗血症になったのではないかと思われるんです。尿中10の菌量はやはり起因菌と考えてよろしんじゃないかと思います。ただその場合に自然尿か導尿かで変わってくると思います。
松尾 自然尿の場合に起因菌と考えられるが、導尿の場合には必ずしも考えられない。否定もできないけど肯定はできない。
参加者 その時に、尿中の細胞がどうなっているかということが気になります。ワイッセ(白血球)がどうなっているかということで、ワイッセが(3+)になっている場合には。
松尾 17〜18あります。
参加者 ということは自然尿であれば起因菌として考えてもよいのではないかということです。
松尾 尿路感染症はあるだろうということですね。尿路のどこの感染症ですか。
参加者 細菌学的には一応膀胱炎になります。はっきり言えないですが。
松尾 敗血症があると考えてよろしいですか。
参加者 はい。良いと思います。
松尾 まとめるのが段々難しくなるんですが、読みすぎて土壷にはまることがよくあるんです。人間が素直でないと読めないですね。この患者さんはもともと基礎的な病態としてはネフローゼと甲状腺機能低下症ですね。
 経過で何が起こったかと言ったらネフローゼ症候群は勿論悪化していますけれど、それに感染症、敗血症が加わった。そして腎不全、消化管出血あるいは二次性貧血が起こった。また薬剤性の肝障害が考えられる。
青木 Eosinoが高いというのはこれで説明がつくのでしょうか。
松尾 どうでしょう。今から疑問点を一つ一つつぶして行こうと思うんですが、合わないところ、説明がつかないところとして、Eosiniphilが多いということですね。
藤田 ちょっと気になるのですが、知識がハッキリしないんですが、血小板を見ると10ですね。それで消化管出血であれば、2月15日でもっと上がって良いように思うんですが、上がり具合が低いです。
松尾 血小板増多がないから消化管出血はおかしいということですね。
藤田 もう少し上がっても良いように思う。このタイプは若干高脂質性の貧血ですね。これからすると出血性は考えられるんですが、前に見た症例からするともっと上がっても良いように思う。
参加者 気になったのはさっき甲状腺機能低下とおっしゃいましたけどステロイドをやりますと、2次的に低下をおこします。それでTSHが上がってT3が下がってきているんではないかと思います。腎機能低下、最初の方でネフローゼを疑ってますけど、最終的には蛋白分画でもあるはず、たぶんこれは脂質蛋白の増加によって、起こっていると思います。γが11.9で非常に低いです、これは免疫不全、typicalなネフローゼパターンと言えるんではないかと思います。
松尾 ありがとうございました。他、疑問点ありませんか・・・。こういったところですが、櫻林先生もうちょっとディスカッションしましょうか。


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