松尾 | それでは最初から追っていくことにします。まず、検尿からやっていきましょう。7ヶ月の間がありますが、皆さんがおっしゃったように明らかに悪くなっている訳ですが、もう一つ見られるのが、fat bodyこれ日本語で言うと卵円系脂肪体ですが、どんな時に出るかご存知ですか、ネフロ−ゼですね。ネフローゼに特異性の高い所見です。前回見逃したのかどうかちょっと分かりませんが、全体としてはネフローゼに合うわけですけれど、赤血球、白血球をどう考えるかということですね。それに何か加味されているかどうかというのも頭に入れておく必要があるかもしれません。 その目で見ますと、尿の中にMRSAが105あります。このデータの読み方難しいです。実際には色んなこと考えます。尿の培養で結果を見る時に、検査で菌はどれだけ出たら有意ととるか、今のところ105とされています。104という方もいらっしゃいますけれど。それから腎盂腎炎があるかもしれないとおっしゃってましたね。MRSAは遊送性がありませんですから、腎盂腎炎を起こすとしたらオシッコの障害、流入障害がないとなかなかおこるものではありませんから、かなり考え難いということになります。可能性はOではありませんけど、可能性は低いです。 それからもう一つ、導尿してあった場合にはこれを有意と捉えるかは別の問題になってきます。いずれにしても膀胱なり、どこかに炎症があるだろうということは言えます。培養の読み方はそのようになります。 貧血が進行していることは誰でも分かりますが、貧血は腎性の貧血だとおっしゃいましたね、福田さんは。腎性の貧血という根拠がどこにあるかということですね。そこで腎臓を見ることにします。腎不全ととるかどうかですね。ここにおられる方は腎不全と捉えましたが意見の違う方いますか? |
山本 | 天理病院の山本です。私としてはStool occultが(+)になっていますので、便潜血(+)というのと、IVHもやっておられるのできっとかなり、この辺りでは食事もとれないような状況が出ています。消化管の出血ということも、考えておいた方が良いように思う。クレアチニンに比べてBUNが高いのも、消化管出血というのは合うんではないかと思います。 |
松尾 | 他の方、如何ですか、消化管出血というキーワードが出て参りましたけど。 |
古川 | 今、述べられたことその通りだと思います。便潜血、陽性か陰性かだけの判定ですね。どれ位の強さというのはない訳ですね。ですから消化管から出血してきますと血清の窒素が上がってきますし、それから気になるのは、あとγ-GTPのところで、MRSAは2月の段階で陽性ですが、外来のときはたぶん陰性だったと思うんですが、先程述べられたように、最初きたときに抗性剤とかステロイドを大量投与していったことによって、MRSAを併発してきたのではないかという気はしております。 |
松尾 | 他ございませんか。貧血は腎性貧血以外に消化管出血も念頭においておく必要があるということです。振り返りますとStool occultというのは便潜血のことですけれど検査方法が何なのか、聞いてみないといけないですね。検査結果は意味のあることなのか考えないといけません。 後は栄養状態が悪い為の二次性貧血を考えるということです。白血球はいかがですか。感染症と一言でおしゃった方が多いですが、CRPと組み合わせ、CRPが高いからそういうことをおしゃったと思いますが、如何ですか。これに違った意見を持たれる方いらっしゃいますか。 |
参加者 | リンパ球の数を提示しているのが気になります。 |
松尾 | リンパ球が減っています。1%ですね。リンパ球が減っているのが気になりますね。好酸球9%はいかがですか。ここで仮に敗血症による感染症として好酸球増加をどう読むかということですね。皆さん強い感染症がある場合には好酸球は出にくいと習いませんでしたか。一般に強い敗血症の場合には好球酸というのは出ないというのが普通です。 それからCRPの高さはいかがですか。CRPが上昇してくるのに約半日から1日かかりますのでこれどうでしょう。極初期は別ですが、本当の敗血症だったらちょっと値が低い感じがしますね。好酸球が高いということも含め合わないです。リンパ球が1%と低いということについては、血液の方いらしゃったら良いんですが、患者さんが何らかの免疫不全の状態にあるというくらいしか分かりません。そうしますと、炎症所見をはたして感染症だけと考えておいて良いのかどうか。アレルギーも考えられ薬剤の関与をどう考えるかということも念頭においておく必要があるということです。独断と偏見です。次に参りましょうか。 BUNから電解質のところですけど、これについては皆さん腎不全と消化管出血という言葉が出ましたですね。これは如何ですか。 |
青木 | BUNとクレアチニンですか、クレアチニンの上がりに比べてBUNが高すぎます。消化管が大出血すれば上がりますが、もしあるとすればそういうことが起こっていることも考えられる。腎臓だけでBUNがこれだけ高いということは説明できないと思います。 |
松尾 | 福田さん如何ですか。 |
福田 | 確かにBUNとクレアチニンの比でよく腎機能を見たりもします。BUNのみが高い時、消化管出血があったと考えられることもあります。クレアチニンはいつから上がっているのかこれだと分かり難いですが、腎機能が低下しないと、クレアチニンは上昇しないと思います、その原因は別として。 |
松尾 | 福田さんは腎臓の機能不全を表したデータであるということですね。青木さんはちょっと違う? |
青木 | 私もそう思います。蛋白も(3+)から(4+)になっていますし、クレアチニンも約2倍に上がってますので腎機能が落ちていることは間違いない。ただBUNはそれだけでは説明つかないと思います。 |
古川 | 例えば免疫抑制剤を長期に使った場合に消化管出血をおこす可能性が出てきますね。そうすると便潜血陽性は、仮にネフローゼだとして、長期に使っていた免疫抑制剤とかステロイドとかそんな影響で潜血反応が陽性に出てきて、窒素が上がってきた。それから松尾先生、先程、CRPが4.65はちょっと低いんではないかとおっしゃいましたけど、これは2月の段階ですので、途中経過もっと高かったのかもしれない。そして抗性剤を大量投与によって少し押さえられた(良くなった)まま、MRSAが出てますからたぶん薬はいっぱい入っていると思いますがその辺は如何でしょう。 |
松尾 | それは可能性ありますね。色んなこと考えたら良いと思います。だから腎臓が悪くなってそれに消化管出血のエピソードがあるかもしれないというご意見です。 |
佐藤 | 後一つBUNの上がり方、クレアチニンの上がり方、先程の先生方のおっしゃられたこと、アンバランスだということは同じなんですが、尿酸がやはり1.5倍位に上がっている、そういう腎機能が犯されている割には電解質のところで仮に変動がほとんどないという、その辺のアンバランスが不思議に思っています。 |
松尾 | アンバランスを具体的に申しますと、典型的な腎不全はNaが低くなってKが高くなるというのが教科書ですね。そういうところがアンバランスという意味ですね。ということは逆に言いますと3.6というのは本当は高くなるのに、低いということは点滴の仕方が悪いということになりますね。治療が悪いということばかりではないが、細かく見るとそうなってしまいます。 Caは低めですね。Caはアルブミンが低いから合致する所見です。リンが高く、尿酸が高い。そうしますと腎臓の機能障害があるということは間違いなさそうですね。それに消化管出血か、もしくは腎血流低下があり軽いショック状態にある。そういうことを考えておくということですか。 |