櫻林 | そこで、蛋白のところへ行きたいと思いますが総蛋白についてはどういうふうに説明していただけるでしょうか。 |
参加者M | 総蛋白が先ず増えています。それからAlbは5.8g/dL位で高いです。α1分画が0.31g/dLで、わずかに高いでしょうか。それからα2が1.34g/dL位です。M蛋白と表示が2つあってそれぞれ0.27g/dL、0.90g/dLとなります。γ分画は逆に0.13g/dLと非常に低値を示しています。 |
櫻林 | まず、総蛋白が増えているということですが、M蛋白を2つ足しても1.2g/dLですし、し かもγ分画はなんと0.13g/dL位しかないので総蛋白の増加の原因になっていないことですね。2つの疑問が出てくるのは、なぜこんなに総蛋白量が高いかということと、M蛋白が約1g/dLしかないのに何故低γグロブリン血症が起こっているのでしょうか。 |
参加者B | どうしてAlbが上がっているのかわかりませんが。 |
櫻林 | そうですね。Albが上がるということは基本的には有り得ない。Albは肝臓で作っていま すね。肝臓はAlbを多く作るということは普通生体はしないです。だから下がることはあっても上がることはない。何か他の原因があると考えねばなりません。 |
参加者B | 腎機能が悪くなっていることと関係は? |
櫻林 | 腎機能が悪くなってAlbが増えるということですか。大体ネフローゼ症候群を見れば分か りますように腎機能が悪くなると蛋白が体内から失われることが多いです。確かにネフローゼ症候群の場合は肝臓のAlbの産生量は増加しますが、それはどんどん体外に失われるので、それに合わせようとして肝臓での蛋白合成が上がるためです。従って高脂血症になるのもそういうことで起こる。Albがこういうふうに増えるのは、相対的な問題として捉えれば、脱水状態で、みかけ上Albが高いのではないかと考えてみることです。これに関しては、また後で議論があるかも知れません。もう一つ、M蛋白が2つあり、それもたいした量ではないにもかかわらず非常に強い低γグロブリン血症であることですね。低γグロブリン血症にM蛋白がともなった場合には、ほとんどが多発生骨髄腫とか原発性マクログロブリン血症などのいわゆる悪性のM蛋白と推定されます。それではこの患者は多発性骨髄腫なんだろうか、あるいは原発性マクログロブリン血症なんでしょうかということですね。ここが本日のポイントではないかと思います。これも後で議論しましょう。 |