櫻林 | 血沈はご承知のように炎症マーカーですから、今まで述べてきた所見の中からは当然亢進していてよいでしょう。CRPも増多している。ただ赤沈値とCRPがおなじように炎症マーカーとして高いのかどうですか。 |
参加者N | 乖離と考えます。 |
櫻林 | 赤沈値が亢進した分ほどCRPが上がってないんじゃないかということですね。これはどういうことですか。 |
参加者N | 尿路感染症ではCRPはもう少し上がるんではないかと思います。血沈が亢進しているのとCRP、Fibrinogenもあると思いますが感染症とは違う炎症がどこかにあるんではないでしょうか。 |
櫻林 | 鋭いところをついているのかどうかという気がしないでもないですが、ご承知のように
CRPという蛋白は確かに炎症で上がる訳ですが、血沈は炎症で上がることと、炎症以外の機序で亢進することがある。それを今、Nさんが突いているのではないかと思います。それはもしあったら話をしておいた方が良いのかも知れません。極く初期の炎症では赤沈よりもCRPが早く上がってきますので、そういうこともある。それから炎症が収束に向かっている時はCRPが早く下がって、赤沈が未だにまだ残っているということもあります。 そういう時期の問題以外に、貧血が起こるとそれだけで赤沈値が亢進します。だいたいヘマトクリット値が1%下がると1mm赤沈が亢進すると言われています。この患者さんはこの時期では貧血はありませんから、貧血によるものではない。もう一つは血漿蛋白の変化によってESRが亢進することがあります。もちろん炎症マーカーであるFibrinogenとか、α1アンチトリプシン、ハプトグロビンが増加すると血中の粘稠度が上がってESRが亢進する訳ですけれども、もっと極端に上がるのがM蛋白の存在です。M蛋白が血中に存在して、特にIgMとかIgAの非常に高度なものが血中に存在すると赤沈値だけが亢進してくるようなことがしばしば現象として見受けられます。ただ、この例では、はたしてそういうことがあるかどうかは分かりません。この程度の変化というのはCRPも上がっておりますので時期の問題か、それ以外の原因でおこっているか、後で解るかもしれません。 |