第12回 特別講演「リウマチ、膠原病外来における血清M蛋白陽性例についての検討」(22)


【若い医者が大学病院で働くストレス】

若い医者が大学病院で働くストレス
  1. こまわりが効かない(救急、休日など)。

  2. 半年くらいでローテートに出る。病院の他の部署の職員とはコンタクトがない。

  3. 医薬分業が始まり、調剤を行う薬剤師とは全く面識がなくなった。問い合わせの電話はジャンジャン。
何か疑問があれば、積極的に、各部署の専門家とコンタクトをとり、顔を売るべきである。得られる情報はかなり大きい。しかしこれができるようになるのは、ローテートが落ち着く、15年選手になってからである。
 若い医者が大学病院で働くストレス、私も若くなくなってきたんですが、小回りがきかない。休日なんか検査はできません。検査は自分でやってください。夜中はクロスマッチを自分でやってください。こっちでガンガン患者さんが吐血していて、主治医が2〜3人しかいなくってバンバン血が出ているのに、クロスマッチを一人で行ってやらなければいけない。システム変えてくれといっても国が技師さん雇うお金がありませんといってこれは変わりそうにありません。半年位で医師がローティトをやる。病院の他の部署の職員とコンタクトがない。

 これは非常にストレスで、私なんか新潟の田舎の方の小さい病院にいきますと、病院の中、皆仲良しでして病院の旅行とか、飲み会とかそういうところで検査の方とかツーカーになって、一緒に酒をのんで、そうすると現場の検査の技師の方から「先生このデータどうなんでしょう」という話がすぐに出てきます。こっちも臨床医やってまして、これどういうことだろうとすぐ、情報の行き来が良いんですが、大病院ですとそういうことがありません。今回この発表ができたのも、私が意を決して「検査科はいったいどうなっているんだ」ということで技師長のところへ聞きに行ったそのアクションからこれが起きた訳ですけれども、やはりこういう他の部署とのコンタクトはキチッとした方が良いという風に考えております。
 今日は検査技師さんですが、今度、医薬分業が始まって薬剤師さんと全く面識が無くなりました。これもたいへんな問題でして、外来が終わると、問い合わせの電話がジャンジャンきます。やっと終わったと思うとポケットベルがなって、しかも僕ら大学の職員のおおくは大学からお金もらってなくて、私は大学にお金払って研究生でやっていますので、どうしても午後からは出稼ぎに行かなければ駄目なんです。そうしないと食っていけない。出稼ぎにいくのに高速道路で走っていると、ピーピーピーとなって調剤薬局に電話をかけて、「これが朝晩になっていますが、患者さんが朝昼を望んでいます。それでよろしいですか」というので「うーん」と思います。高速でパーキングエリアに入って電話して「良いです」とかいって次の病院のところへ遅刻しそうになりながら走るんです。そういうことで非常に医薬分業も顔と顔の見えない仕事になってきました。
 その問題点については、実は私、薬剤師さんの会にまた乗り込んでいって話をしたんですが、薬剤師さんも非常に喜んでくれて、医師ともっとコンタクトを取るようにしようと。やっぱり何か疑問点があれば各部署の専門家とコンタクトをとり顔を売るべきだと思います、得られる情報はかなり大きいです。  実はこのM蛋白以外にもう一つ非常に良い研究がありまして来年のリウマチ学会で発表するんですが、それも検査科とタイアップしてやったお陰の業績があります。ところが問題は、これが出来るようになるのはローテイトが落ちつく15年選手になってくる。私は今年で16年目なんですが、大学からはしばらく出ないと思うんですが、それまでは2ヶ月、半年おきであっちへ行ったりこっちへ行ったりですから、なかなかこういう検査の技師さんと、上手くコンタクトをとることができないというのが大きな病院の問題ではないかと思います。ですから、今日ご出席の方々も是非、疑問点があったら、臨床医にこれどうでしょうかということで、持っていかれたらどうかと思います。そうすると臨床医の方も目から鱗が落ちるというか、これだというアイデアが出て、さらに患者さんのためになると思いますので、それを私の最後の言葉にします。  どうもご清聴ありがとうございました。(拍手)



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