芝 | 先生ありがとうございました。本来ならば内容がたいへん豊富なので、もっとたくさん講演時間をご用意すべきでしたが、時間がないので途中で端折って頂きすみませんでした。たいへん国際的なお話ですけれども、せっかくの機会ですからどなたかご質問ございましたら・・・櫻林先生いかがですか。 |
櫻林 | 中村先生、今日はお忙しいところありがとうございました。このフォーラムではこういうふうな話は本来やらなかったかもしれませんけれども、どうしても標準化という問題を我々には大切な仕事としてこれからやっていく必要がある訳で、その意味で「脂質の標準化」で中村先生にお願いしたわけです。 先ほどのお話の中で日本は非常に精度が良いというお話でしたが、私どもが他の国際委員会に出ておりましても痛切に感ずる訳です。例えば、ここ2、3年Lp(a)の標準化でヨーロッパに行って話をしてますと、中村先生がおっしゃたように、日本が非常に精度が高い国であるということを痛切に感じます。ただ残念ながら日本から発信していない。ヨーロッパは日本が何もしていないのではないかと思っている。そういう意味で、一人、中村先生が毎年アトランタに出かけて、日本の良いところをお話頂いているのは、本当に感謝申し上げる次第です。 その中で先ほどHDL-コレステロールの精度の問題の中に、精密度は非常に良いんだが正確さの問題がまだ少しあるということでしたが、今、実はあるところでHDLコレステロールの標準化をやっている訳です。これは中村先生がお話されたCDCのDisignated Comparison Methodとほとんど同じ意味を持たせ、なおかつ、日常標準に近いものを作ろうということです。酵素法を使った方法で標準化しようということで勿論中村先生にもお願いしているんですが、そのきっかけになったのがホモジニアスHDLコレステロールのアッセイが出てきたからですが、先ほどのお話ですとホモジニアスのHDLコレステロールアッセイに問題があるのか、あるいはそれが出てきたから精度が落ちたということなのか、ご意見をお聞きしたいです。 |
中村 | わが国からの情報発信が少ないという櫻林先生のご指摘に、私も同感致します。特に、試薬やキャリブレーターを国内で製造し、世界を相手に発売している試薬メーカー、並びに、分析装置の製造会社からの情報発信が少な過ぎると思われます。試薬、キャリブレーター、分析装置の品質は患者の測定値の精度に直結するだけに、その製品と性能に責任を有するメーカーは、学会、特に国際学会等の場を通じて、もっと積極的にユーザーに対して情報提供をするべきだと考えております。 次に、HDLの件でございますが、CDCのネットワーク(CRMLN)に参加している米国内の脂質基準分析室の一つに Wisconsin 大学(State Laboratory of Hygiene,University of Wisconsin)があります。数日前に、その分析室の責任者であるDr.Wiebe(Donald A. Wiebe,Ph.D.)が来日致しました。Dr.Wiebeは、かつてCDCに勤務したことがありますし、また、米国におけるNCEP(Nationnal Cholesterol Education Program)の審議委員を勤めたこともある脂質分析の専門家であります。 昨日、神戸でお会いした折りに、Dr.Wiebeにわが国で開発されたHDLの直接法(Homogeneous method)の評価につきまして率直な意見を求めましたところ、米国内の評価は非常に良いとのことでありました。来月、9月には、CDCの標準化部門総括責任者であるDr.Myers(Gary L.Myers,Ph.D.)が私共の招きで来日しまして、15日(敬老の日)に大阪で標準化の講演をお願いしております。席上、Dr.Myersは、CDCに報告された標準化成績を基に、HDLの直接法はこれまでの沈澱分離法に比べ、その測定精度はむしろ向上しているとの判断を資料と共に示すものと思われます。わが国の学会等でしばしば指摘される乖離の問題に関する米国の考え方は、次のように伺っております。すなわち直接法はスクリーニング法の一つであって、基準分析法(Reference method)ではないことを認識したい。スクリーニング法の役目は、微量の検体を用いてできるだけ早く、しかも目標値に近い(正確度の高い)測定値を患者さんに返すことであり、ある特殊な疾病を対象として直接法で測定した場合には、乖離するサンプルが発生するのは避けられない、このような観点からみれば、HDLの直接法は99%の患者に有益な情報を提供しており、評価に値するとのことを聞いております。乖離の問題を含めまして、直接法の測定限界につきましても、その試薬を世界に先駆けて開発し、その組成・濃度を熟知している試薬メーカーからの情報提供がもっとあってしかるべきだと、考えております。 |
芝 | 他にございませんでしょうか。先生どうもありがとうございました。今日のご講演をきっかけにこのフォーラムを側面からご支援頂ければと思います。ありがとうございました。(拍手) |