第11回 特別講演「脂質の国際標準化(測定精度の現状と標準化の効果)」(23)


【測定精度の現状・総コレステロール(2)】

臨床試験における
総コレステロールの測定精度

1999.09
実施
年/月
標準化
達成率
正確度精密度総合誤差
Mean %BiasCVTE
11995/1032/44
施設
72.7%
n=44(全施設)
-1.78%
n=44(全施設)
0.85%
n=44(全施設)
3.92%
n=32(標準化)
-0.97%
n=32(標準化)
0.72%
n=32(標準化)
2.85%
21998/1120/29
施設
69.0%
n=29(全施設)
-0.08%
n=29(全施設)
0.94%
n=29(全施設)
3.71%
n=20(標準化)
+0.05%
n=20(標準化)
0.81%
n=20(標準化)
2.80%
 前のスライドでは、2回以上重複して標準化に応じて頂いた臨床検査室の成績をも含めておりますので、必ずしも測定精度の現状を的確に表現しているとは云えない面があります。
 それでは、初めて標準化を受けた分析室の断面成績について、最近経験しました臨床試験から2例をご紹介させて頂きます。このケースの方が、総コレステロールの現状をより的確に表しているものと思われます。先ず、1995年10月に実施したスタチン系の薬剤投与による内科系の治験では、全国44施設の臨床検査室が標準化に参加して頂きました。参加施設の内訳は、大学病院が17,一般病院が21,検査センターが6施設であります。

 標準化の可否に係わらず、全施設を対象とした平均値で見る限り、測定精度はいずれも判定基準を満たしておりますが、総コレステロールの標準化達成率は72.7%に留まっております。即ち、この成績は標準化に参加した44施設の内、32施設の測定値しか世界に通用しないということを意味し、また、全施設の平均値だけで全体を判断することはリスクが大きいことを意味すると考えられます。参加施設の中には、そうそうたる大病院が含まれるだけに、この達成率は予想外のものでありました。果たして臨床試験成績の評価委員会では、この結果に疑問視する意見が出た程でありました。
 以上が、今から4年前の成績であります。昨年の11月、別の外科系の治験に参加する機会がありました。その時の測定精度をスライドの下段に示しておりますが、総コレステロールの標準化達成率は69.0%であり、最近の成績の方が4年前の成績よりもむしろ下回る結果となりました。今日、総コレステロールを測定する意義が問い直される時代に差し掛かっております。酵素法の最初の試薬が市販されて既に四半世紀に近い24年が経過し、基本検査項目としてすっかり定着した感のある総コレステロールですら、この程度の標準化達成率で停滞していることに今一度、注意を喚起すべきではないかと思います。



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