第11回 特別講演「脂質の国際標準化(測定精度の現状と標準化の効果)」(10)


【基準分析法(1)】

 第二要件としての基準分析法では、第一にCDCのコレステロールの基準分析法である「Abell-Kendall法」、第二にHDLコレステロールの基準分析法である「超遠心法」、第三にLDLコレステロールの基準分析法である「Beta-Quantification(BQ)法」の測定手順を簡単にご説明致します。

CDCのコレステロール基準法
(Abell-Kendall法)


StandardSRM911b(25,50,100,200,300,400mg/dL)
Sample0.5mL Sample(Standard) + 5.0mL KOH/Alcohol
Hydrolysis50℃,60min. → +5.0mL H2O
Extraction10mL Hexane → Shaking for 15min.
Evaporation2mL Extracted Hexane + 3mL Hexane
 → Vaccum Oven(50℃,60min.)
ColorLB-Reagent at 25℃,30min.,620nm

 
 Abell-Kendall法は、コレステロールのエチルアルコール標準液(25, 50, 100, 200, 300, 400mg/dL)、もしくは、検体(血清、血漿等:CDCとCRMLNでは、測定開始時の検体量として500uLを使用する)にKOH性アルコール溶液を加えて50度Cで60分間、エステルコレステロールを加水分解し、その後、水を加えた後、n-ヘキサンを添加して生成した遊離コレステロールを振とう抽出し、抽出ヘキサンの一定量を分取して減圧下で蒸発乾固させ、それにLB(Liebermann-Burchard)試薬を添加発色させ、分光光度計により620nmで比色定量する古典的な分析法です。

 ただ、ここで一つ確認させて頂きたい点は、Abell-Kendall法を操作することは、検査室にある普遍的なガラス器具や理化学分析機器を使っても出来ないことはありませんが、それでは基準法に要求される十分な精度は到底期待出来ません。CDCやCRMLNの分析室で使用されている装置類は、高価ではありますが、世界で最も高性能の分析装置が使われております。例えば、標準液や検体、KOH性アルコール溶液、nヘキサン、LB試薬等の溶液の採取や分取では、ホールピペットや手動式ピペットが使われることは全く無く、4台の専用自動分注装置(米国ICN社のDIGIFLEX)が使用されておりますし、その他、専用の振とう装置、真空ポンプと冷却トラップとバキュームオーブンを組み合わせた蒸発乾固装置、分光光度計、超遠心機、チューブスライサーなどの装置群で構成されております。これらの装置一式を新規に購入するとなりますと、約2500万円は必要になるのではないでしょうか。



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