第10回 記念講演「DRG/PPSとELP診断技術」(8)


米国に於ける社会保障制度(5)


米国の社会保障制度(つづき・つづき)

  • 1990年代 HMOによるManaged Care
     病床数と医師数の増加を背景に保険料を抑制
     HMOの利益率が20-30%に

    Managed Careへの医師と被保険者の不満が爆発、合衆国・州政府が規制

     医師側の対応:HPOの結成
        約3,000、
        そのうち80%は最近2年間でMSOの援助が必要
        HPO(Hospital Physicians Organization)
        MSO(Management Service Organization)

     HMO側の対応:契約内容の改善
        POS(Point-of-Service)への支払を許す
        (一部自己負担;例えば医療費の30%)

  • Clinton's Health Reform Plan は可能か?
    6本の柱・安心Security
    ・簡素化Simplicity
    ・節約Saving
    ・選択Choice
    ・良質Quality
    ・責任Responsibility
 1990年代になりますとHMOによるManaged Careが広まったのは良いのですが利益率が20〜30%と膨大になりました。しかしここで患者さんと医師の間に大きな不満が出まして、合衆国、州政府が規制に乗り出さざるを得なくなった訳であります。医師側も保険会社から「先生こういう患者さんがいきますけれどもこういうこと以外はやって貰っては困ります」と。患者さんには「あなたはA診療所に行きなさい」という医学的な知識をもったあるいは教育を受けた人が言うのではなく、ビジネスマンが、第3者が決めるということに医療の本質を歪めることになった訳であります。
 しかしアメリカは議会のロビー活動が非常に大きいですから、民間保険会社の財力を使ってなかなか国民皆保険制度に踏み切れないということであります。それでクリントン政権になってから、国民皆保険制度に移行しようと努力していますが未だにそれが実現できないでいます。ただ合衆国と州政府が規制にのりだしましたので、また患者さんと医師の側からたいへんな不満が爆発しましたので、そのままでは保険会社もいけなくなりました。

 現在はPOSへの支払を許すことになりました。というのはPoint-of- Serviceというのは、もしもあなたが「B先生のところへ行きたければどうぞ行っていいですよ、保険で払いますよ。しかしその場合は30%自己負担ですよ」というやり方が進んでいる。日本の医療制度に近くなってきました。そこで今は、保険会社は600〜800ともいわれていますから、それがどういう形で生き残るかいろんな工夫をして被保険者、医師の側の満足を得ながら、尚かつ自分たちの利益を追究するということで、来年がどうなるかということは、はっきり分かりません。



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