第10回 記念講演「DRG/PPSとELP診断技術」(7)


米国に於ける社会保障制度(4)


米国の社会保障制度(つづき)

  • 1980年代 HMOが急速に普及
        1975 - 220万人 → 1980 - 700万人
        1995 -6,300万人
    • 合衆国政府が推進している
    • 最大の民間保険会社Blue Crossの14%
    • 州政府のメディケイドの25%
    • 中・大企業勤務者の3分の2

  • 1983年 4月 診断関連群の定額支払制
     DRG/PPS(Diagnosis-Related Groups/
     Prospective Payment System)
    • 83基本的診断群(MDC)と
      383診断関連群(DRG)に分類
    • 支払区分
       入院費(Part A)と医師費(Part B)
       1984年から入院検査科はPart Aへ
        法定論争の結果、一部はPart Bへ
        (血液塗抹検査、骨髄検査、
        判定困難な輸血検査、検査値の解釈)

  • 1987年 外来患者検査料支払の改革
    • メディケア被保険者へ直接請求
    • 全国統一基準による検査料を設定

  • 1988年 CLIA'88が施行
        (Clinical Laboratory Improvement Amendment '88)

 さらに1980年代になりますと、政府が後押ししたものですから急速にHMOが普及しまして、拡大していきました。
 ところが1983年になりますとそれでも政府管掌の保険負担が大きくなったので1983年ついに非常にドラステックな医療改革を行ったのであります。それがDRG/PPSというシステムであります。どういうことかというと、383の病態または病名に分類致しまして、それぞれの病名・病態に決まった支払額を設定する。例えば急性肺炎の患者が病院に入院したら、その患者一人については、例えば300ドルしか払いませんよ、あと何を検査しても、何日病院に入っていても、どういう薬を使っても一切かまいませんというやりかたです。ですから病院ではできるだけ入院日数を減らし、薬を減らし、検査をやらないようにということで医療費の削減にかなりのインパクトを与えたことは事実です。
 アメリカの保険支払の基本は、医師と入院費とに分かれてまして、医師には直接、医師の診察料として支払われますけれども、他の診療費は入院費として支払われます。ところが最初入院の検査料は全部病院の収入に入るということでスタートしたものですから、検査に携わる医師、特に臨床検査医または病理医といった医師が全く収入がなくなってしまうということになりました。そこで法廷闘争まで持ち込みましてついに一部の医学的な判断を伴う検査については医師の費用が認められました。

 1987年になりますと、入院の方をどんどん締めて行きましたので外来の患者がどんどん増えて、外来で、例えば針生検などは入院させないで外来でやってしまう、などどんどん外来の患者の診療が増えていきました。そこで今度は外来の患者の検査料をなんとか押さえようということが考えだされました。メディケアの被保険者には直接検査料を請求するというやり方になりましたし、検査料も全国一律に決められた訳です。我々はこれを聞いても驚きません。ずーとこういう方式で、政府によるManaged Careが行われていましたから。特別目新しいことはないのですが、アメリカの医療界にはたいへんな規制というふうに受け取った訳です。
 そうすると安かろう悪かろうというムードがでてきます。出来るだけ費用を削減しようということでどんどん医療の質が落ちて行くような事例が見えてきましたので、今度は検査室に質を維持、適切なクオリティを検査室が維持するためにCLIA'88という法律が施行されました。これは臨床検査室改善法というものです。この時点からアメリカの検査室に対する精度管理に対する規制が非常に厳しくなってきて、サテライトラボラトリ(診療所)で行っている検査室についても、大きな病院の検査室、民間検査センターと同様に精度管理の上での規制がきちっとされるようになってきた訳です。この時点で診療所検査の比率がどんどん少なくなっていきます。この時点では検体検査の約1/4は診療所で行われていた訳ですが、現在では相当これが減ってきています。



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