第7回 報告「血清蛋白分画におけるReference Interval(基準範囲)の設定」(26)

26.質疑応答(6)

 櫻林先生、一言どうぞ。
櫻林 先ほどのA/G比の問題ですが、これは合わないで当たり前だと思います。なぜ合わないかというと、ポンソーという染色液は、Albに優位に染色されるわけです。他のグロブリンに対しては、例えばAlbが100だとしますと、80とが70の染色性しかありません。ですから当然A/G比は狂うはずです。合わなくても当たり前。合わせる方がおかしい。
日高 合わすというのは、全く数字を合わすという意味ではなくて、定量AlbのA/G比と、泳動で求めたA/G比は違ってきますので、そのバイアスとしてまず見ていく、ということと、Albが少し動くことによって、グロブリンのデータも全て動いてきますから、それまで基準範囲を細かく決める必要は果たしてあるかどうかという疑問もあります。
 ただ、同じ膜、染色法、装置でだいたいデータはこの範囲に集束するということはいいと思うんですけど。
櫻林 やはり、Albだけでなく、他の分画も一定の基準範囲を設けるべきだと思います。それを設けないと、そこから逸脱しているかどうかということがわからない。ただデータを出している分にはいいんですけど、先ほどの松野さんみたいに、レポートを出しているというときには絶対必要です。普段見ていく場合にはある基準範囲を設定しておくべきである、というふうに思います。
 ただ、末梢血液像と同じように相対的な問題ですから、1つが狂うと他が狂ってくるということは、確かにあります。それを是正するためには、少なくとも絶対値というものが、くっついてこなければいけないと感じています。
 それから、もう一つ、松尾先生のデータを誉めたいんです。過日、河合先生が血漿蛋白の基準範囲を設定されました。これは、千人以上の健常人からのデータを集計して例えば喫煙だとγ分画が下がってくる、即ちIgGが下がってくるというデータを出しているんです。それで、これは日本で初めてだ、ということを言ってましたけど、もうすでにその前に松尾先生がちゃんと出している、ということです。
 これは、2つが偶然合致したというよりは、むしろ正しいデータじゃないかな、という感じを持ってます。年齢の問題と性別の問題は非常に重要なポイントがありまして、一般的にIgGに間しては性差がないと言われているんですが、もっと細かくやりますと、あるいは出てくる可能性があって、その1つの大きな要因は、更年期以降です。更年期以降は、外観ではなくて、生理学的に言うと、男と女が同じになるということですから、そういう意味で、データがまた変わってくるわけです。
 そういう意味で、例数が増えれば増えるはど、先ほど松尾先生が言われたように、性差、年齢とその他の要因との組み合わせがもっとはっきりして正しいデータがでる。そのためには、1万件とか、そういう単位が必要となってくるでしょうし、そうなるとみなさん方のご協力を得なければいけない、ということで、松尾先生が来年しゃべることになってしまうわけであります。
 よろしくお願いします。
 本報告では、化学的な方法と泳動で求めたA/G比がどういうバイアスにあるかということが1つ。もう一つは、g/dLで出すか、%で出す方がいいかということが新たな問題点として浮き彫りにされました。それから、性差、年齢差についても検討していくことができればと思います。来年の会に向けて、よろしくお願いします。
 どうもありがとうございました。



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