第4回 特別講演「ポリアクリルアミドゲル電気泳動による血清及び尿蛋白の意義」(20)


4-2 アルコール性肝障害


アルコール性肝障害

概念

 「アルコール性」とは、長期に電気泳動にわたる過剰の飲酒が肝障害の主な原因と考えられる病態


発生

 肝細胞でのエタノール代謝により生じるアセトアルデヒドが主因の一つ
 

 金沢医科大学に高田明先生がおられますが、その先生といっしょに仕事をさせて頂いているのに、アルコール性肝障害というのがあります。



aldehyde dehydrogenase 2 (ALDH2)


  • ADLH2 不完全欠損(heterozygote) 45%

  • ALDH2 完全欠損(mutant homozygote) 10%

 
 いろいろと高田先生に伺って非常に驚いたのはAldehyde dehydrogenase2というのがありますが、日本人の内で不完全欠損型と完全欠損型が55%いて、大丈夫な人が45%なのです。私はよい事に45%に入るわけですが、例えば不完全欠損型はお酒を飲んでいて直ぐに赤い顔をする人で、又飲んでいて途端に眠る人は不完全欠損型です。この人は余り強くはないのですが、C型肝炎になると肝ガンになる可能性が非常に高い人です。完全欠損型は全く飲めない人ですが、こういう人は大学に入って一気飲みをさせられると急性アルコール性肝炎であぶないめにあう人です。100人中10%は完全欠損型ですから、高田先生は成人になった時どの型か判別しておかないといけないと話しておられました。


アルコール性肝障害の診断基準(高田試案)
  1. 常習飲酒家(日本酒に換算して一日平均3合以上、5年間以上継続)、または大酒家(日本酒に換算して一日平均5合以上、5年間以上継続)である。ただし、ALDH2活性欠損者(ALDH2遺伝子のheterozygote)では、3合以下の飲酒でもアルコール性肝障害を生じ得る。

  2. 禁酒により血清GOT、GPT活性がともに4週間以内にほぼ正常値(70単位以下)にまで下降する。ただし、重症型アルコール性肝炎、進行した肝硬変、肝癌合併例は例外とする。

  3. 肝炎ウイルスマーカー(HBs、HCV抗体、HCV−RNA)は陰性である。

  4. 以下のアルコール性肝障害に特異的なマーカーのうち、検索された検査の半分以上が陽性である。
    1. 血清トランスフェリンの微小変異が陽性。
    2. CTスキャンで測定した肝容量が増加(単位表面積当り720cm以上)。ただし、非代償性肝硬変、肝癌合併例は例外。
    3. 禁酒により腫大していた肝臓の著明な縮小。4週でほとんど肝腫大を認識できなくなる。ただし、肝癌合併例での正中線上の触知は例外とする。肝下縁の確認は、弱打診か、超音波断層で行うことが望ましい。肝の縮小は禁酒後早期(1週以内)で著明なので、禁酒直後の検索が重要である。
    4. アルコール肝細胞膜抗体が陽性。
    5. 血清GDHとOCT活性がともに異常高値を示し、その比(GDH/OCT)が0.6以上である。
    6. 禁酒による血清γ−GTPの著明な低下(4週後で禁酒前の値の40%以下)。
     
 図はアルコール性肝障害の診断基準(高田試薬)ですが、大酒家というのは一日平均5合以上、5年間以上継続する方です。
 ここで注目してほしいのは「以下のアルコール性肝障害に特異的なマーカーのうち、検索された検査の半分以上が陽性である」の項で「血清トランスフェリンの微小変異が陽性」の項目です。トランスフェリンは余り総量としては変化しないのですが、微小変異があるという事です。
 トランスフェリンのpI 5.5〜5.7のデシアロトランスフェリンが、アルコール性肝障害では出てくるのを、ひとつの診断基準にしているわけです。これは等電点電気泳動でないとできないわけです。



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