第4回 特別講演「ポリアクリルアミドゲル電気泳動による血清及び尿蛋白の意義」(17)


3-15 銀染色法


銀染色法(silver stain)の原理

蛋白固定
 ↓
銀イオンまたはそのジアミンイオンを蛋白に結合
[Ag(NH
 ↓
還元(ホルマリン、クエン酸)
 ↓
金属銀(タンパクバンドの黒化像が得られる)

 銀染色は写真の現像の技術なのです。蛋白を膜に固定しておいてから、銀イオンを蛋白に結合してホルマザンで還元して金属銀にすると真黒い蛋白バンドが得られます。私が始めて銀染色の論文を見たのがKerenyi法でした。その報告はフェリシアシカリが使っていました。知らないままに、熱心にやっていたら、シアンが出て途中でひっくり返りそうになりびっくりしたものです。


銀染色法
 Morrissey法 操作法の概要
ポリアクリルアミドゲル(泳動終了したもの)
 ↓
タンパク固定(1時間)
 ↓
水洗(2回)
 ↓
グルタルアルデヒド処理(30分)
 ↓ 水洗(2時間)
 ↓
DTT処理(30分)
 ↓
銀染色(30分)
 ↓(硝酸銀液)
水洗(すばやく2回)
 ↓
還元(適当な黒化像が得られるまで)
 ↓
停止(20〜30分)
 ↓
水洗

 銀染色はいろいろな方法を手掛けましたが、その中で、Morrisseyの方法が一番きれいに染まるという事で、自製する場合には、Morrissey法を使っています。私は糖蛋白だけを染める良い染色液がないかとずっと探しているのですが、論文で過ヨウ素酸で酸化した後で、銀染色しますと糖蛋白だけが銀に染まるという論文がありました。何度も試したのですが、1回だけアルブミンが全く染らず糖蛋白染色がうまくいったのです。しかしそれきりで1年位かけたのですが、どう工夫しても染まらず断念しました。今日でも糖蛋白の良い染色法があればもっといろいろ解析できるのではないかと思い、探しています。


市販銀染色キット

製造・発売元商品名備考
関東化学電気泳動用銀染色キット
Silver stain KANTO
ポリアクリルアミドゲル用
第一化学2D−銀染色”第一”ポリアクリルアミドゲル用
ナカライテスクシルベストステインポリアクリルアミドゲル用
日本バイオラッド
ラボラトリーズ
バイオラッド
シルバーステイン
ポリアクリルアミドゲル用
フナコシシルバーステインキットポリアクリルアミドゲル用
ヘレナ研究所タイタンジェル銀染色キットアガロース用
和光純薬銀染色キットワコーポリアクリルアミドゲル用
 
 いろいろと苦労しましたが、現在では各社から、銀染色のキットが出ています。それぞれの方法は多少違いますので、蛋白に対する染色性が各社いろいろ異なっています。しかし非常に手軽になったという事は、これからいろいろな蛋白を分析する上で良いと思います。例えば突発性難聴では、耳の中に水が溜るのですが、その水の分析や膝の中に溜まった水のタンパクの分析など今日殆んど成されておりません。ですから銀染色により、体内で微量に出てくる水のタンパクの分析をすればもっとよい情報がえられるのではないかと思います。微量の体液タンパクの染色に今後銀染色は大いに使いたいと思っています。



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