第2回 特別講演「免疫グロブリン異常症」(10)


10.M蛋白の特徴(2)


M蛋白の特徴
  1. 電気泳動で均一な蛋白帯を示す。
  2. 免疫学的に単一な種類のL鎖またはH鎖から成る。
 次にM蛋白であるというふうに同定するためには、もう1つの性質を満たす必要があります。免疫学的均一な蛋白を示すことですが、これには例外があると申しました。
 先程のBence Jones蛋白とheavy chain proteinというのは例外で、その他称なものもありますけども大体よく遭遇するものでは、それ以外はとにかく均一な蛋白帯を作ります。それだけではM蛋白帯とは同定することはできませんで、もう1つ免疫学的に単一な種類のL鎖又はH鎖であるということを証明する必要があります。これは単一なバンドが2つ重なっています。その場合にもしlight chainを持っているM蛋白であればlightchainの免疫学的な特性を調べてκかλか、どちらか一方であるということを証明すればいいわけです。


 同じ分子の中に4本のpolypeptide chainの中にどんな病的な状態であっても、κ1本とλ1本と入っていることは絶対ありませんので、2本入っている場合には必ず1対のκかλが入っているので、そのM蛋白がκであるか、λであるかどちらか一方であるということを証明すれば、ほぼモノクローナルであるということが確信できます。もしlight chainのないheavy chain disease protein、H鎖病蛋白であれば、今度はH鎖の方のheavy chainのほうのサブクラスを調べる必要があります。γ‐chainですと、今のところγ1、2、3、4の4つのサブクラスがありまずし、α-chainの場合には1と2のサブクラスが見つかってますし、μ‐chainの場合にはまだ十分に検索されてませんが1と2は2つは少なくともある。ひょっとしたら4つあるかと言われております。

 デルタとイプシロンについては、今のところサブクラスが確立されていません。ですからheavy chain disease proteinの場合には、一応電気泳動の均一なバンドとして比較的幅広いです。だがIgGのM‐proteinしかし均一な形で出ているかどうかが、かなり有力な手がかりになります。
 他にもポリクローナルなheavy chain fragmentが出ることがあります。特に尿の場合に、ポリクローナルなFc fragmentが出ることがありますので、それらとheavy chain disease proteinとを鑑別するということになると、一般的には決定的な方法というのはありません。臨床的な状況も加味して尿、血清との比較をしながら推定せざるをえません。

 このようなことで、L鎖それからもう1つlight chainのκとλを決める場合に注意しなければいけないのは抗体です。市販されている抗血清の中である特定のクローンのlight chainに反応しないものがあるのです。ですから1種類の抗血清で、もしも反応しないからといって、例えば抗κとも抗λとも反応しないから、これはlight chainのないheavy chain fragmentだとか、というふうにすぐ判断しないでlight chainのタイプを決める場合には、少なくとも2種類の違った抗血清でもってやってみることです。出ればいいですけど、出ない場合には慎重に抗血清の種類を代えてやってみる必要があります。



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