第2回 特別講演「免疫グロブリン異常症」(6)


6.M蛋白血症を伴う代表的疾患

 これらのM蛋白の種類を見分けるために電気泳動法と免疫電気泳動法がどうしても必要なわけです。
 これらの12種類のM蛋白の出てくるM蛋白血症という病態には良性のM蛋白血症、それからグリーンで書いた悪性M蛋白血症とがあります。悪性M蛋白血症というのはM蛋白を産生している細胞群が悪性の増殖を示している場合というふうに定義することができます。ただ良性の場合には、M蛋白を作っている細胞群がmalignancyの性質をもっていないで、良性の性質をそなえているという場合を良性のM蛋白血症というわけです。
 悪性M蛋白血症というのは、もしM蛋白血症が見つかったら、それ自体を治療しなければいけません。ところが良性M蛋白血症は、それ自体は別に治療する必要はないわけで、もし基礎疾患が有れば、基礎疾患のほうを治療しなければなりません。ですから、根本的に臨床の対応が違うということになります。

 悪性の方は大部分がmyeloma骨髄腫でありますし、ごく少数例がmacroglobulin血症、しばしばWaldenstromというスウェーデンの蛋白内科学者の名前をつけてMacroglobulinemia Waldenstromという言葉を使いますし、原発性マクログロブリン血症とも呼んでいる疾患です。
 その他に極めて稀ですけども、H鎖病Heavy chain diseaseと言って、Fc部分の免疫グロブリンフラグメントが血中に放出される病態があります。

 良性の方は大きく3つのグループに分けております。第1群Secondary malignant gfoup 悪性の基礎疾患があって、それに付随してsecondaryにM蛋白が出てくるというものです。例えば、ガン、白血病あるいは悪性リンパ腫といったような悪性疾患が基礎にあって、2次的にM蛋白が出てくるというグルーブが約6%、比較的少ないですけど、しかしガンそのものをとってみると、正常のあるいは他の良性疾患よりはかなり頻度が高くなります。

 ここでちょっと今、分類が不明確になっている疾患があります。悪性リンパ腫というのは骨髄腫Macroglobulin血症、H鎖病と非常に似かよった病態をしていまして、もしも悪性リンパ腫の細胞そのものが、もしM蛋白を作っていれば、悪性M蛋白血症に入れるべきですし、悪性リンパ腫の細胞そのものが悪性であっても、M蛋白を作っていなく、他の良性の細胞が2次的に作っているのであればbenignの方に入るということです。これはかなり臨床的に問題になることがあります。
 一番多いのは、この第2群Secondary benignというグルーブです。もともと良性の基礎疾患があって、それに付随してM蛋白が出てくるというものです。例えば多クローン性、幅広い形で免疫グロブリンが増えてくるような疾患、すなわち免疫グロブリン産生組織に刺激が加わっているような、例えば膠原病、慢性感染症、その他考えればいろいろなものがありますが、そういう免疫グロブリンの増加を来たすような傾向のある疾患が基礎にあって、2次的にM蛋白が出てきたという場合を第2群Secondary benign typeというふうに分けているわけです。
 第3群というのはPrimafy benign typeと呼んでいるグループで、普通は免疫グロブリンとほとんど関係がありません。例えば、鉄欠乏性貧血なんていうのは直接免疫グロブリンと関係ないと思われます。そういう基礎疾患があるのですが、たまたまM蛋白が合併しているという場合を第3群Primary benign typeというふうに呼んでいるわけです。
 ですから肝硬変だとか慢性感染症だとか、膠原病だとかいったような疾患があってM蛋白がたまたま見つかったら、これはSecondary benign type第2群になるわけです。それからたまたま高齢者でM蛋白がちょっと見つかったというのは、第3のグループに含められるということであります。ですから第1群、第2群、第3群と分けた背景は、基礎にある疾患が免疫グロブリン産生母地、産生組織にどのような影響を及ぼすかということを頭に入れて分類したものであります。



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