第2回 特別講演「免疫グロブリン異常症」(5)


5.M蛋白の種類

 そこでM蛋白というものが現在知られている範囲内で、どういう構造的な違いがあるかをここでまとめてみます。

 先程言いましたheavy chain 1対とそれからlight chain 1対、合計4本のpolypeptide chainが、大部分の正常分子ではs-s結合によって連結されているわけです。
 そういう基本単位の構造を頭に入れておかれまして、その基本単位がそっくりほぼそのままM蛋白の構造であるという場合がいくつかありまして(それが大部分なわけですが)IgG型のM蛋白それからその中にpolymerを形成しているものがあるということです。それからIgA型のものでPolymerを形成しているものもあります。通常はIgM型のM蛋白というのはPentamer19Sの大きな塊として出てきますのでMacroglobulinemiaというように呼んでいるわけです。

 しかし病的には基本的な単位がバラバラになって、7S IgMの形で認められるM蛋白もあります。その他にIgD型のM蛋白、IgE型のM蛋白というふうに分けることができます。これはほぼ完全な形の分子構造を持っているのですが、その他に病的にはバラバラになってくるものがあります。赤の枠で囲みましたようにheavy chain 1本とlight chain 1本からなっている半分子型のM蛋白というものもあります。現在のところ、IgGとIgAの2種類が見つかっております。なぜ半分子が起きるかと言うと、櫻林先生が日本で初めて報告していますが、ヒンジ部分に分子の欠損があるんです。アミノ酸の一部欠損があって、両方のheavy chainが合体できないということで半分子の形に出てくるわけです。

 今度はheavy chainの内でもFcフラグメントの部分が出てくるものがあります。そのFc部分の免疫学的な特性からγ-chain型、α-chain型、μ−chain型と四つ報告されていまして、一例だけですけれども、Ig Dに相当するδ‐chainタイプのものも報告されていますが、まだ病態として独立したentity、病気であるかどうかは、はっきりしていません。

 次にlight chainだけがバラバラになって出てくるものがあります。これはBence Jones蛋白というふうに呼んでいるわけです。実を言いますとlight chainというのは正常でもごく少量、フリーの形で血中に放出され、そして尿中に排泄されています。というのは、正常の状態でもlight chainの方がheavy chainよりも少しだけ多目に細胞の中で合成されていて、その分が血中を流れ分子量が非常に小さいので尿中へすぐ排泄されています。ですから尿を正常の尿でも200倍、400倍、500倍と濃縮してみますと、いわゆるBence Jones蛋白に非常に似かよった熱凝固性を示します。56℃で凝固して濁ってきますし、又免疫電気泳動しますと後程もうしますけれども、やはりlight chainが検出されます。しかしこれはポリクローナルなんです。正常で出てくる、或は移植腎の拒絶反応の時、或はその他いろいろ腎臓で病的な変化がある時にfree light chainが増えてきますが、それはポリクローナルなんです。ですから免疫電気泳動をやると非常に長い直線的な線になります。ところがBence Jones蛋白というのはfree light chainでしかもモノクローナルな性質を持っているものと定義付けすることができます。



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