第1回 特別講演「病態スクリーニング検査としての血清蛋白分画の意義」(10)



10.M蛋白帯の相対易動度





M蛋白の相対易動度と還元粘度との関係
 M蛋白の易動度も同じようにして相対易動度を求めてみますと、本態性M蛋白血症の場合には、殆ど正常のIgGクローナルdistributionと相対易動度の頻度のカーブが似ています。
 所が、多発性骨髄腫ですと、スローγ寄りに片寄っており、後程判った事ですが、IgG1サブクラスの骨髄腫の頻度が多い事が、このM蛋白の相対易動度に反映している訳です。スローγ寄りに行く症例に粘稠度が非常に高くなるケースが多いし、先程の波形帯を示す傾向が強い訳です。

 骨髄腫で粘稠度が高くなる症例は、臨床的に高粘稠度症候群、Hyperviscosity Syndoromeといって特殊な臨床症状を呈し、危険に陥る可能性がある訳です。ですからM蛋白の相対的な身動度を臨床に検査室から報告してやる事は、臨床家がHyperviscoslty Syndoromeを疑うきっかけにもなりうるという事にもなります。最終的には、粘稠度計で血液又は血清を測定する必要があります。



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