第1回 特別講演「病態スクリーニング検査としての血清蛋白分画の意義」(4)



4.分画パターンの重視


分画パターンの重視

  1. β−γ bridgingとIgA・IgM

  2. M蛋白帯の鑑別
     Rivanol沈殿法

  3. Separax上の波形帯
     ・粘稠度との相関
     ・粗面小胞体の拡大
      (Interaplasmocytic Protein Viscosity I)
  
 分画パターンを重視するという事には、三つの事を私共は今までやってまいりました。β‐γ bridglng、M‐蛋白帯を見逃がさない事。免疫電気泳動が普及していなかった場合には、M蛋白の中でも種類が色々有るのを、どう見分けるか、ごく初期の方法で、リバノール沈澱法等をルーチンに採用した事も有ります。これは中央鉄道病院の時代です。そしてセパラックスという特殊な膜で波形帯を示しているのは、どういう事を意味しているのか、これも随分長い間かかわりました。最終的な考えをまとめる為に、電子顕微鏡など色んな方法を使って研究してまいりました。

 しかし波形帯というものがそれ程病的病態をスクリーニングする上で大きな意味を持っていませんが、昔は波形帯を示すM蛋白を見つけたら、ほぼIgG型骨髄腫ですよと言ってセパラックスの場合よかった訳です。しかしもうそれだけで、M蛋白或いは骨髄腫を診断するという時代ではありません。どうしてもM蛋白を固定する為には、免疫電気泳動をしなければ、現在の診断レベルを維持出来ない訳です。そうすると、波形帯を示すという事よりは、むしろ正確にM蛋白をデンシトメトリーで測る事の方が重要です。だからM蛋白が出来るだけシングルバンド(平等バンド)に出るような膜を作って下さいという要望が出てきた訳です。


 左図をごらんいただくと、β‐γ bridgingの意味はというと、IgAとIgGの幅広いポリクローナルな増加を意味しているという事です。大人の場合には、この一般的な方法ではαとβとの谷とβとγの谷がほぼ同じ深さです。しかしこれは多少電気泳動の条件が変われば変わりますが、少なくとも現在の標準操作法では大人ではこういう関係が成立ちますので、この高さより上がってさたらIgA、IgGが幅広く特にIgAが幅広く上がっているという事が判ります。逆に新生児ですと、ここが殆どベースラインに近くなります。生理的にIgAが非常に低いので新生児では正常でもα‐βの谷よりもうんと深くなってきます。β−γ bridgingは濾紙の時よりもセア膜、セパラックスの方がうんと肝硬変における頻度が少なくなりました。先程、松崎先生のお話がありました様に、セパラックスSPになりますと、ややその頻度が高くなると思います。そういう事で、それぞれの膜の性質によって、β‐γ bridgingというものの頻度が、当然変わってくると思います。将来出来れば、今研究中ですけれども、こういうβとγの谷の高さというものを分析して自動的にそれを表示するような機械が必要になってくると思います。
多クローン性高γグロブリン血症の電気泳動像



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