第 8 回発表・抄録番号 1

血清蛋白分画において複数のM蛋白を認めた1例 (7)

【症例へのコメント】
  • (司会)この症例は、多発性骨髄腫患者ではなく肝硬変と診断された患者で、IgG型M蛋白が2つとIgA型M蛋白が1つの計3つのM蛋白が検出された例であります。
    一般的に、肝障害型の電気泳動パターンは、γ分画の幅広い(ポリクロナール)増加として観察されます。このように肝障害型で、モノクロナールと呼ばれるM蛋白が明確な形で3本出現するという例は希と思われます。
    ところで、この症例ではIgA型M蛋白が比較的幅広く観察され、ノイラミ二ダーゼ処理で2本のバンドに分かれたとのことですが、なぜ2本に分かれたのでしょうか。糖鎖、特にシアル酸との関連性が注目されます。

  • (助言者)このようなM蛋白の症例は、比較的少ないものの一つです。
    ちょっとおさらいをすると、この2つのM蛋白は位置的にはどうでしょう、免疫電気泳動のパターンとちょっと違いますね、アガロース電気泳動による免疫固定で見るともう少し後かと思いましたが、ポストβの2本はほぼ間違いなくIgGのM蛋白であり、α 領域のIgAですね。このIgAは先ほどのご説明にありましたように幅広くって本当にM蛋白かというふうな評価をされている。それを免疫固定でやってみたら、IgA−κ型に間違いないだろうと思った。ノイラミニダーゼ処理をすると移動度がずれてより陰極側にもう1本バンドが出現し、合計4本のM蛋白になってしまう。
    皆様ご経験あるかと思うんですが、等電点電気泳動おやりになって、尚かつ免疫固定をおやりになると、普通のセ・ア膜で1個だと思われていたM蛋白が5個も6個も出てくることがあるんですね。ということは我々がモノクロナールと呼んでいるM蛋白は実はいろんなM蛋白の集合体であるという可能性があります。したがってたまたま4本位出て来たということではないかという感じも持っています。尚かつノイラミニダーゼ処理で移動度がIgGは動かないのにIgAが動くということは、少なくとも糖鎖、特に糖鎖の先端にあるシアル酸によってかなり陽極側にIgAが引っ張られているというような現象があるんではないかということです。
    臨床的にはどうだということになるんですけれども、比較的多くのM蛋白が同時に見つかる症例というのは、多発性骨髄腫よりも免疫グロブリンが異常になってくるような自己免疫性疾患とか肝障害に合併する良性のM蛋白の可能性が高いと思います。



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