第 4 回発表・抄録番号 5

TP高値の為セア膜電気泳動、免疫電気泳動を実施した症例

【症 例】

分画報告書

免疫電気泳動

 
泳 動 所 見蛋白分画(上) γ分画の増高(IgA増高の疑い)。波形帯は見られなかった。
免疫電気泳動(下) IgA−κ型M蛋白。プレアルブミン、アルブミンの軽度減少。
その他の検査所見血算 貧血。
血液像 ミエローマ、メタ等出現。大小不同、赤芽球出現。
TP 若干上昇。
尿酸 上昇。
コレステロール 低値。
総ビリルビン 若干上昇。
電解質の変動、Ca若干上昇およびりん低下、つまり逆転減少が起こっている。
LDH 高値。
アミラーゼ 低下。
IgA定量 著増。
IgG定量 低下。
IgM定量 低下。
フェリチン 正常値の150倍。
LAP 若干高値。
ZTT マイナス。
経 過 治療サイドでは肺疾患にのみ注目していた。骨粗鬆所見を発見し腰痛を聞きだしたのは臨床検査技師で、分画報告書を見てミエローマを確信し治療サイドに提示したが、「波形帯がない=ミエローマではない」と取り合ってもらえなかった。
 泳動像よりIgA著加を予想した技師は免疫グロブリンを定量し、IgA著増、IgGおよびIgMの低下を、さらに免疫電気泳動によりIgA−κ型多発性骨髄腫であることを確認した。念のためフェリチンが正常値の150倍であるという結果なども添え、再度治療サイドに情報提供したところ、入院から10日後に骨髄採取に踏み切り、病理組織学的所見ならびに骨髄像検査所見から多発性骨髄腫と診断された。

【解 説】

  1. M蛋白があきらかにあるにもかかわらず、臨床側が「波形帯がない=ミエローマではない」としたのだと思う。最終的な診断が出るまで約2週間近くかかったことになるが、おそらく検査室の「かなりしつこい」説得によってはじめて臨床側が認めざるをえなくなったということだろうと思う。病院の規模にかかわらず、このようなことはままある。
    これからの検査室は検査データを返すだけではなく、情報提供の場になるべきである。

  2. いわゆる「教科書」の説明が「悪性M蛋白ないし骨髄腫等は波形帯を形成する」となっていることが問題である。勉強をしてる若い先生ほどそう思っている。医師の勉強不足という以前に、臨床検査系の教科書が、改訂版を出さない、遅れすぎている。
    医師を教育するというのではなく、新しい検査を採用したときや検査法が変わったときに情報提供することは、検査室の仕事だと思う。



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