第2回ELP診断技術フォーラム

症例検討の概要

 昼の休憩時間に、ポスターセッション形式で行われた症例検討の試み。
 機材故障のためお届けできるのはほんの一部です。なお、文責は弊社にありますことをお断りしておきます。

1.SP膜の湿度温度の特性について

[テーマ]
弊社全自動電気泳動装置CTE−5000の評価中に気づいた点。
 
[検討内容]
 測定条件の最適化の検討をしていなかったこともあるが、再現性が悪かった。
 よく調べてみると、α1、α2は気温の上昇とともに高くなり、アルブミンは逆に朝のほうが高くて、徐々に下がってきた。そういう、温度(*)とよく相関していると思われるデータが出ていた。
 19時くらいから泳動をはじめるようにしたところ、非常に再現性のほうはいい成績が出た。
 すべての泳動装置に関して言えるかどうかははっきりいえないが、CTE−5000に関しては、一定条件下で操作をできることが望ましく、そうでなければ温湿度にあわせて塗布前乾燥時間を毎日設定するなどの工夫が必要と思われた。
 
(*)
温度の日内変化
試験は2月から3月にかけて実施した。明け方は約17℃、日中はだいたい24〜25℃まで上昇するというような、規則正しい矩形を示した。
湿度の日内変化
天候にもよるが、午後まではさほど大きく変動しない。

2.β分画のうしろの異常バンド

[症例]
γグロブリンとβグロブリンの間に、M蛋白と思われるバンドが出る。
 
[検討内容]
 補体のC3C4の易動度が、金属イオンの影響で変わることが原因と思われる。
 濾紙中に含まれているカルシウムが悪さをする。ブリッジにする濾紙を新品にすると、まだカルシウムがあるためか、全部βとγの間の位置にバンドが出る。ところが使い古しの濾紙ではカルシウムが溶出しきってなくなってしまい、バンドは出なくなる。最近は、脱カルシウムの濾紙を使うように勧められている。
 
 β分画の二峰性について

3.免疫電気泳動で尿と血清が同じようなパターンを示した症例

[症例]
ミエローマのIgD−κ型、尿中にベンス・ジョーンズ蛋白陽性。免疫電気泳動では、尿と血清が同じようなパターンを示した。

4.泳動パターンが「ぐしゃぐしゃ」になった症例

[検討内容]
 セパラックスは塗布点がα1付近であり、支持体と反応するM蛋白があると異常パターンとなる。もっと極端な例では、おたまじゃくしのような形になることもある。

5.γグロブリンが二峰性の症例

[症例]
他施設では5年くらい前からγグロブリンが二峰性になるという症状が出ていた。2年前に免疫電気泳動を施行。そのときM−bow様の沈降線が、IgGのミドル位とスロー位に2本でていた。IgMが下がってIgGが上昇してきている。
 こういった場合、どのようなフォローをしたらよいか。
 
[検討内容]
 M蛋白が良性か悪性かということは、臨床的に非常に重要である。他の免疫グロブリンが下がっていてM蛋白自体が増加傾向にあるものには、それまでは良性だったかもしれないけれども、悪性に転化している可能性が非常にある。

 2つのM蛋白があるので、それがサブクラスが違うんじゃないかという話があったが、蛋白をある程度精製してから定量化するという方法が必要だと思う。ただ、サブクラスの血清(モノクロナール抗体)には品質のバラツキがあって、非常に優秀な抗体というのはそうたくさんない。それを厳選して検査しなければならない。

6.追加発言)健診におけるM蛋白血症のフォロー

[検討内容]
 健康診断をやっていると、結構M蛋白が出る。いちいち報告すると、フォローする人がいっぱい出てきて、臨床側がたいへんなことになってしまうほどだ。M蛋白が出ているときには必ず免疫電気泳動をして、M蛋白の同定だけはしているが、γ分画が低いときは、報告しない。(γ分画が)だんだん上がっていく場合は、20%以上になってきたらもう一度注意するということをやっている。

 ある団体の63〜4歳のかたは、γ分画が27〜8%、かなりシャープなM蛋白だったため免疫泳動で同定したところ、IgG型M蛋白だった。きちっとフォローしてもらうために、専門病院に送った。
 しばらくして戻ってきたときには、高コレステロール血症でコレステロールが300くらいあり、TGもかなり高かった。栄養士の食事指導と運動でコレステロールが改善しているが、M蛋白も減少傾向にあり、どういうことなのかと思って非常に興味深く見ている。いままでは悪化するM蛋白血症ばかりを見てきたが、ホメオスタシスの範囲では生活環境により変動があるのではないか。

 M蛋白量が微量で、γグロブリン分画そのものは非常に減ってたある症例は、よく調べてみたらIgE型M蛋白だった。患者は亡くなった。こういうこともあるから、M蛋白の量が少ないからといって決してないがしろにせず、
注意をしてほしい。



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