【M蛋白バンドの対応について】

●まず、たしかにM蛋白であるかを確認します。
  1. M蛋白様バンドでないことを確認します。
  2. 免疫電気泳動、免疫固定法などを実施し、M蛋白を同定します。

●たしかにM蛋白であることが確認されたら、その悪性度を確認します。

 これにより治療内容が変化しますので、慎重かつ確実に判断する必要があります。項目としては、以下があります(文献1)。具体的な診断基準は諸説ありますので成書等(文献2、3、4)をご参照ください。いずれにせよ、総合的な判断が必要です。
  1. 貧血の有無
  2. M蛋白の種類・量
    • IgM型であれば、多発性骨髄腫と原発性マクログロブリン血症の鑑別が必要ですいずれも悪性疾患ですが、治療内容が違います。
    • BJP型であれば、悪性疾患である確率が高くなります。また、アミロイドーシスや腎障害を伴うことがあります。
    • 一般には、量が多いほうが悪性度が高いことになりますが、BJP型のように血中M蛋白が高くならない場合、非定型骨髄腫のようにM蛋白を伴わない場合もあるため、量が少ないからといって良性とはかぎりません。また、本態性M蛋白血症のように、M蛋白高値であってもその時点では治療の必要がない場合もあります。量だけでは判断できません。
  3. M蛋白以外の免疫グロブリンの量
    • 減少が著しい場合は、悪性であるといわれています。
  4. 骨髄像
    • 多発性骨髄腫では異型性形質細胞の増加(通常10%以上)(文献2)が見られます。ELP診断技術フォーラムでは、82.6%という症例も提示されています。
    • 原発性マクログロブリン血症では、低形成でリンパ球様細胞50%以上(文献2)。
  5. X線または生検による骨破壊像の証明
    • 多発性骨髄腫の約30%に「骨打ち抜き像」が見られます(文献2)。そのため、腰痛や骨折が発見のきっかけとなることも多いようです。

M蛋白と老人性M蛋白との区別または基準が知りたい


●報告のしかたについて
  1. 蛋白分画の報告は、無理に分画修正などを加えず「M蛋白疑い」などとコメントを付けるのが望ましいと思われます。なぜなら、6分画あるいは4分画になったということは、「いつもと違うパターンである」ということだからです。5分画として報告すると、分画値%にあまり変動がない場合には 見過ごされることがあります。また、M蛋白様分画の出現以外には、全体として蛋白量の変化がない(病態とは直接関係ない)こともあります。
    ピーク名は、コントロールや他の検体と見比べながら確認し、分画報告書にコメントとして記入するとよいと思われます。

  2. M蛋白はどこに出現するかかわらない成分です。あえてどこかの分画に分類する必要はないと思われます。M蛋白が通常分画の中間にあるためにフラクション位置が動いてお困りの場合は、マニュアルで適当な位置にフラクションをいれ、分画修正してください。どの分画に含めるか、あるいは6分画等として報告するかは以下のポイントを踏まえて判断してください。
    • TPは変動しているか
    • Mフラクションが存在しないと仮定した場合にどのような変化があるか
    • 他の検査所見(とくに免疫グロブリン定量値など)はどうか

  3. 参考値としてM蛋白量が知りたい場合は、手動でM蛋白の両端にフラクションを入れる分画修正を行い、分画値%と総蛋白量[g/dL]から算出します。

  4. 「見えるような感じがする」程度のM蛋白も報告すべき?

 参考文献



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