第11回 特別講演「脂質の国際標準化(測定精度の現状と標準化の効果)」(8)


【標準物質(1)】

 先ず、第一要件としての標準物質であります。標準物質につきましては、間もなく開催されます第39回日本臨床化学会(京都、1999年9月30日〜10月1日)のシンポジウムのテーマである「標準物質に関する最近の話題」の中で詳しく報告させて頂きますので、ここではスライドのみ2枚、お示しするに留めておきます。

標準物質
  1. 患者の血清とマトリックスが類似し、しかも

  2. 値付けが正確であることの要件(正確度の伝達、必要条件)の他に、その標準物質を使用して酵素法(日常分析法)で濃度未知の患者個人血清を測定した時に、標準分析法によるその患者個人の目標値とどの程度一致するか(正確度の遡行、十分条件)の双方向が満足されてはじめて、その標準物質が正しく機能する
 1枚目のスライドには、標準物質としての必要条件と十分条件を記しました。ここで一つご注意頂きたいことがあります。正確な表示値を持った標準物質をキャリブレーターとして使用すれば、どんな日常一般法でも常に正確な測定値が得られるとは必ずしも限らないということであります。キャリブレーターが正確な表示値を持つことは、Application Baseの下方経路の任務である伝達性という面から見れば大変重要な要素ではあります。しかし、逆方向の上方経路である遡行性(Traceability)という面からの証明を経ないと、標準物質としての機能を全うしたことにはならないという点をご理解頂きたいと思います。



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