第10回 リレー講演より「高齢者に見出されるM蛋白バンドの解析」(2)



 1971年以前に良性M蛋白血症と診断された241人について20-35年の追跡調査を行った。血清、および尿検体を電気泳動、免疫電気泳動し、多発性骨髄腫、アミロイドーシス、マクログロブリン血症や他のリンパ系の疾患に発展する率を調べた。患者は4グループにわかれた。

Group1:46名(19%)現存しており良性のM蛋白血症。
Group2:23名(10%)血清M蛋白濃度3g/dL以上で化学療法を受けていない患者。
Group3:113名(47%)骨髄腫の症状が無く、亡くなった患者。
Group4:59名(24%)多発性骨髄腫(39)、amyloidosis(8)、マクログロブリン血症(7)、悪性リンパ系疾患(5)
それぞれM蛋白が見つかってから平均10、9、8、10.5年で発症している。

 今後もそれぞれについて、1/4が多発性骨髄腫、amyloidosis、マクログロブリン血症、悪性リンパ系疾患に悪性化しているので追跡調査を行なわなければならない。
 10年ほど前まで、微量M蛋白を検出しまして、検査側から臨床側に報告致しましても、特別な臨床症状がないとして終わりになってしまう時代でした。
 Mayo Clinicで20年から35年の追跡調査のデータが論文に出ています(B.A.Kyle:Mayo Clinic Proc. 1993.6826〜36)。それを見てみますと良性のM蛋白と言われた241人の20年〜35年の追跡調査をしましたところグループ1で19%が生存している人、グループ2の10%の人はM蛋白が3g/dl以上で化学療法を受けていない患者です。グループ3は骨髄腫の症状が無く亡くなった例47%、注目すべきことは、M蛋白が出ているが、骨髄腫で死亡しなくても、普通の人より生存期間が短いということです。それからなんと24%がM蛋白が検出されてから平均約10年で多発性骨髄腫などに発症している事実です。

 ということは今まで良性M蛋白として判断されて、そのままほっぽり出された24%の人は確実に多発性骨髄腫になるということですから、微量のM蛋白の検出というのも今後非常に大切だということが分かります。



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