第9回 技術講座「遺伝子診断のいろは」(16)


III.ハイブリダイゼーション

 ブロッティングしたフィルターとプローブを混合し相補鎖同志の結合を行わせます。最近感度の高いプローブが工夫されています。基本は32P標識ですが、ビオチン標式、ジゴキシゲニン標識等色々あります。それぞれの標識法にもとづき、オートラジオグラフィー、発色または発光が利用できます。
プローブの合成は普通、DNA合成反応で行います。ニックトランスレーションやランダムプライマー法が一般的です。場合によってはPCRをつかってプローブ合成することもあります。また、オリゴヌクレオチドプローブも可能です。これですとテンプレートを必要とせず、純粋に化学合成で作成できます。
 プローブの長さ、すなわち、何塩基あれば目的の遺伝子のみを検出する特異的なプローブとなるかですが,リピート領域でなければ20baseもあれば充分です。PCRのプライマーだって20base前後でback ground なくDNA合成するのですから。
 プローブと標的DNA間で相補鎖同志が結合します。A−T、G−Cでそれぞれ水素が2つと3つの水素結合です。従って高温だとはずれやすく、低温だと多少まちがっていても結合したままとなります。又、塩濃度をあげれば、はなれやすくなります。ホルムアミドを加えてもTmが低下します。実験室でそれぞれback ground が低く、しかし濃いバンドが得られる条件を捜す必要があります。Back ground を減らすためのブロッキングですがDenhard't solution やスキムミルクを使用します。

 ハイブリダイゼーションはプラスチックバックやガラスの筒にいれたりし、ウオーターバスや定温のオーブンで行います。ハイブリダイゼーションは長時間およそ12h〜24h振とうしておきます。教科書的にはもっと短時間でも良いとありますが、我々は丸1日行うことで良い結果を得ています。
 ハイブリダイゼーションが終わったら洗浄です。これには2つの目的があり、結合しなかった余分なプローブを取り去ることと、結合していてもまちがった部分に対するものをはずすことです。前にも述べたようにDNAは水素結合で二本鎖形成するのだから、洗いの温度を上げていけばまちがいが多いものからはずれていくのです。この理屈を応用すればホモロジーのある遺伝子の検索も可能となります。
 余分なプローブがすべてはずれたら結合を可視化します。RI標識ではオートラジオグラフィーするだけです。
その他ビオチン標識やジゴキシゲニン標識プローブでは免疫染色と同様に発色あるいは発光を行います。我々はシゴキシゲニン標識後ALP−抗シゴキシゲニン抗体を使ってNBT発色を行っています。通常シングルコピーの遺伝子の検出に5μg 程度の細胞DNAがあれば充分です。繰り返しになりますがよいバンドを得るために制限酵素消化は確実に行ってください。



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