第1回 特別講演「病態スクリーニング検査としての血清蛋白分画の意義」(13)



13.血清と他の体液間の透過比

 このようにして、血清蛋白分画という一つの検査だけから推定出来る病態というのが、かなり複雑に絡み合って病気を作り上げている事が判ります。血清蛋白だけでなく、尿を調べる、或いは腹水を調べる、或いは髄液を調べる等々色んな体液の蛋白分画も大変重要な意味を提供する場合があります。


セルロースアセテート電気泳動法
による透過比の算出方法


透過比=排出液の分画値(%)
血清の分画値(%)

 例えば、尿の蛋白分画と血清の蛋白分画の透過比のスロープによって、例えば、腹水、胸水なんかに漏れ出す蛋白質の分子ふるい効果がある程度推定出来ます。

 腎臓の場合、一般的には単純な早期のネフローゼ症候群では、このスロープが非常に立っていますが、だんだん糸球体基底膜の崩壊が進んで、慢性腎炎の形になると分子ふるい効果が無くなりスロープがねてくる。ある程度この蛋白分画の値だけでも、それぞれの蛋白の失われ方、腸で失なわれている場合、腎臓で失われている場合、皮膚から失われている場合、それぞれの状況によって、ある程度そのパターンが決まってきます。小さな成分が主に失われるのか、大きな成分もある程度失われるのか推定出来ます。

各分画の透過比と蛋白漏出




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