第 6 回発表・抄録番号 2

セパラックスSPにおいてアルブミン分画が波形帯になった症例

【症 例】

ザイモグラム

 
泳 動 所 見アルブミン分画が波形帯となった。ただし、1ヶ月後、2ヶ月後、3ヶ月後の再検査では、波形帯は出現しなかった。
 
その他の検査所見アルブミン分画の波形帯と結びつくような所見なし。
 
検 討 事 項  体腔液混入の影響を確認するためのヒアルロニダーゼ(スプラーゼ)添加試験と、支持体をセパラックスに変更した蛋白分画を実施した。
 
ま と め
  1. 体腔液混入の影響を確認するためのヒアルロニダーゼ(スプラーゼ)添加試験と、支持体をセパラックスに変更した蛋白分画を実施した。ヒアルロニダーゼ添加により波形帯はなくなり、セパラックスを支持体に用いると鈎型アルブミンが見られた。
  2. アルブミン分画の波形帯はヒアルロン酸様物質の混入によっておこったものと考えられたが、それがなにか、どのくらいの量であるのかは不明。なお、今回の波形帯は一過性のもので病態(本態性高血圧)とは関係ないと思われた。

【解 説】

  1. 6月と8月のほかに7月にも蛋白分画を実施しているが、そのときには波形帯はなくなっていた。詳しい状況は把握していないが、治療法などを変更したようすはなかった。薬剤の影響の可能性もあるが、具体的なことはわからない。

  2. この測定条件では波形帯が消えたというだけであって、波形帯の原因物質が消えたという証明にはならないから、一過性とはいえないと思う。特異染色でバンドの有無を確認したり、泳動条件を変えて同定したりすべき。アルシャンブルーとポンソー3Rの2重染色で酸性ムコ多糖の同定が簡単にできる。

  3. セパラックスの鈎型アルブミンは、血中ヒアルロン酸濃度が50μg/mL以上にならないと出現しない。SPではもっと高濃度でないと出ないだろう。今回の症例では、かなり高濃度のヒアルロン酸が存在するのではないか。また、ヒアルロン酸の上昇は悪性腫瘍で頻度が高かった。

  4. ヒアルロン酸は易動度的にアルブミンの陽極よりにある。粘稠性が高いし、アルブミンと結合していると思われる挙動を示す。結合というよりは巻き込みという感じかもしれない。関節液ではとくにそうだ。

  5. 体腔液の混入は、いやがる子供から採血する場合に、血管ではない場所に針が刺さった場合がほとんどと聞いている。


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