第 3 回発表・抄録番号 3
アルブミン分画にテーリングがみられる症例
【症 例】
泳 動 所 見
:
アルブミンがテーリング。β分画やや高値だが、それ以外に大きな変化はない。
その他の検査所見
:
TP高値。アルブミンが絶対量として高値。
T-CHO、TG高値。膠質反応高値。
結 論
:
アルブミンのテーリングは高遊離脂肪酸の影響、β分画高値はβリポ蛋白の影響と思われる。
【解 説】
TP高値(ビウレット法)。分画値%をg/dLに換算すると、α
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以外の分画が高値である。
アルブミンが、絶対量で高値を示す病態はない。TPが間違っているか、プラズマメイトのようなアルブミン血漿蛋白製剤を投与されていると考えられる。
本症例はT-CHO、TGが非常に高い乳麋血清であるから、この濁りがTP測定に影響したのではないか。このような場合は、分画値%をg/dLに換算して考えないほうがよい。
β分画が高いのは、おそらくβリポ蛋白の影響だろう。
アルブミンのテーリングの原因は、抗生物質や投与薬剤の影響、高(間接)ビリルビン検体、高遊離脂肪酸の場合が考えられる。
遊離脂肪酸のように陰性荷電の強い物質が増加し、アルブミンに結合した場合には、陰性荷電がほかのよりも少し強くなるから、陽極側に尾を引く。
妊娠や高脂血症でHDLが増えるような場合、HDL(高比重リポ蛋白)は保存により一部変成し、アルブミンのプレアルブミン領域にテーリングすることがある。リポ蛋白染色で確認できる。
しかし、本症例は新鮮血清ということだから、この可能性は少ない。
プレアルブミン領域に泳動されるものには、このほかにサイロキシンバインディングプロテインがある。
また、肝障害の腹水で、一過性に現れた分画を経験したことがある。
アルブミンの陰極側にテーリングする場合は、AFPの可能性もある。AFPは、バンドとしてはっきり現れることはまれである。
かぎ型アルブミンでも、支持体によってはアルブミンの陰極側にテーリングする。セパラックスSPでは、アルブミンの易動度が少しズレた程度に見える。
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