【フリーのλ型とは】
- (司会者)ありがとうございました。
血清蛋白分画ではネフローゼ型の典型的なパターンを示し、その中からM蛋白が見いだされた貴重な例だと思われます。この症例では蛋白尿、低蛋白血症、浮腫、高脂血症の4つの所見が認められることから、ネフローゼの診断基準に当てはまり、M蛋白が認められたとなれば続発性のネフローゼが最も疑われると思います。
この発表について、何かご質問などありませんでしょうか。Mさんいかがですか。
- (発言者M)フリーのλ型という意味がわかりませんので教えて下さい。
- (司会者)非常に良い質問です。フリーのλ型の抗血清をどうして用いたかという質問だと思いますが、発表者さんいかがですか。
- (発表者)免疫固定でλ型とフリーλ型、2種のライトチェーンに対する抗体を用いたのですがフリーλ型というのはBJPを検出するために用いました。普通BJは2量体を形成していますが、その外側に出ている抗原決定基を認識する抗体がλ型で、中の方の抗原基を認識するのがフリーλ型の坑血清と考えて頂ければ良いと思います。
- (司会者)ご存知のように、ベンスジョーンズ蛋白(BJP)は、56〜60℃の熱処理で混濁し、100℃付近で再溶解する特異な熱凝固性を示す蛋白質で、遊離のL鎖が単一クローン性に血中や尿中に出現したものであります。
市販坑血清の中には、このBJPの検出を目的とした抗遊離L鎖血清があります。通常の抗L鎖血清は免疫グロブリンのL鎖に存在するいくつかの抗原決定基に対する抗体を含んでいますが、抗遊離L鎖血清は、遊離のL鎖を抗原として異種動物を免疫しているため、通常のH鎖とL鎖とが結合した状態での隠れた部分の抗原決定基に対する抗体も産生されるわけです。この抗血清を遊離L鎖を含まない正常ヒト血清などで吸収すると、遊離な状態でしか存在しない抗原決定基に対する抗体のみが作られることになります。したがって、この抗血清を用いると、通常のIgG、IgAあるいはIgMに存在するL鎖とは反応せず、BJPのみが反応するわけです。しかし、抗血清の作製原理から考えても明かなように、BJPばかりでなく、多クローン性に出現する遊離のL鎖とも反応するため、とくに尿中BJPの判定には注意する必要があります。
日常のM蛋白のL鎖の型判定、血中および尿中BJPの検出には通常の抗L鎖血清で十分と思われます。よろしいでしょうか。
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