櫻林 | 尿の一般検査でどこが異常かというと、分かっていることは55才の男性で、身長、体重が書いてあって、入院が2月25日で退院が4月14日ということになっています。 その入院の10日位前のデータと、入院2日後のデータとさらに2日後のデータと、退院10日前のデータがある。従いまして入院前にどういうことが起こっていたのかということを知るために、最初の2月15日のデータだけをまず見ましょう。他のデータは後で関係のあるところだけそっちへ飛びます。2月15日はどうでしょうか。蛋白が陽性ですね。また、赤血球が8〜10/E、顆粒球円柱が20-22/A出ているということです。 |
参加者 | 細菌と酵母が出現している。 |
櫻林 | はい。それから。 |
参加者 | 白血球が非常に多いと思います。 |
櫻林 | どうしてか。 |
参加者 | 細菌感染か膀胱炎と思います。 |
櫻林 | 尿路系の細菌感染症ではないかということですね。確かに白血球がたくさんあって赤血球より有意に出ていますので、尿路系、特に膀胱炎ではないか、ということですが。 |
参加者S | やはり尿路系の細菌感染が疑われると思います。pHがだいぶ酸性に傾いています。 |
櫻林 | pHが酸性というのは尿路感染で良い? |
参加者 | アルカリです。 |
櫻林 | 尿路感染が起こるとアルカリになるんですね。もう一つ、顆粒球円柱というのはよろしいですか。 |
参加者 | 円柱は尿細管から出てくるので、腎臓に病変があると思います。 |
櫻林 | そう。膀胱炎でなくて、尿細管すなわち腎臓に病変があるんではないか。腎盂腎炎とかそういうことになるのでは、松尾先生いかがですか。 |
松尾 | 外来ですので、たぶん導尿していないだろうと予想しています。そうしますとこの検査データは信用できると思います。細菌も酵母も出ていますから、ひょっとしたら細菌感染症だけでなくて真菌も有意なものとして捕らえていく必要がある。CASTSの読み方についてはちょっと難しいですけれども、上部に何かの障害があるかもしれないということ位でしょうか。また比重が小さいということも一つの所見として読んでおく必要がある。希釈されているということですから尿細管に何らかの障害があるかもしれないということになります。 |
櫻林 | 蓄尿だったら先生おっしゃるようなことも問題ありますけれども、極く一般的には新鮮尿を取らなければ尿沈渣はできないですから、そういうことを考えると尿比重を云々できないかもしれない。顆粒球円柱が見つかっているので、上位尿路感染がある。その結果、蛋白もでている。2月15日にはこういうことが推定できるのではないか。 |