【透析患者検体の電気泳動の注意点】

 
質問 透析患者検体を電気泳動する場合の注意点を教えてください。
回答 1.なぜ注意が必要か

 透析患者には、透析中に血液が凝固するのを防ぐために抗凝固剤が投与されています。よく用いられているのはヘパリンで、このような検体を「ヘパリン加血」ということもあります。
 ヘパリンには、フィブリノゲンの活性化因子を阻害しフィブリンの形成を阻止する作用があります。投与量は血漿分離に用いるほど高濃度ではないため、フィブリンがジワジワとゆっくり形成され、血清分離後もフィブリン析出が続くことがあります。

 フィブリンの発生は、オートアナライザーのサンプルチップやノズルを詰まらせるなどトラブルの原因となります。全自動電気泳動装置も、塗布チップにフィブリンが付きコンタミを起こす、フィブリンの塗布残りやヘパリン加血中のフィブリノゲンがM−蛋白ピークを疑わせる、といった影響を受けます。


2.対策と操作
1)検体中のフィブリンおよびフィブリノゲンの除去
 フィブリン除去のもっとも簡単な方法は、血清ではなく血漿を用いることですが、血漿にはフィブリノゲンが含まれています。フィブリノゲンは、タンパク分画においてはβとγの間に出現し、分画値に影響します。そこで、血漿あるいはヘパリン加血に凝固促進剤を加え、フィブリノゲンを除去します。
 ヘパリン加血用凝固促進剤は、レプチラーゼなどの蛇毒や合成品が市販されていますし、ヘパリン加血用凝固促進剤入り真空採血管も商品化されています。
2)塗布チップに付いたフィブリンを取る
  1.  洗剤による塗布チップの洗浄 : CTE−700、1000シリーズでは、血清塗布後直ちに専用洗剤を使用した洗浄が自動で行われます。それ以外の装置の場合は、1日の処理後、塗布チップを専用洗剤につけ置きします。
  2.  塗布チップのブラシッシング : 塗布チップにフィブリンがこびりついている場合は、ブラシッシングして落としてください。しかし、この操作は煩雑ですし、チップを傷めることがありますので、「検体中のフィブリンの除去」の実施をお勧めします。

3.凝固促進剤のデータへの影響

 ヘパリン加血用凝固促進剤入り採血管の使用経験が報告されています。結果は、「フィブリノゲンピークは除去されたが、M蛋白ピークは変化しない(泳動像への影響はない)」というものでした。1)





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