第9回 技術講座「遺伝子診断のいろは」(21)


IV.結果の解釈法(5)


悪性腫瘍の遺伝子診断

Southern法:DNA 増幅の検出
N-myc神経芽細胞腫
c-mycBurkittリンパ腫
c-erbB2乳癌
DNA 構造異常の検出
c-mycBurkittリンパ腫
Bcl-2濾胞性リンパ腫
c-ablCML
PCR法:腫瘍特異的な組換え部位を増幅することで残存腫瘍の検出
H-ras,K-ras
点突然変異
肺癌、大腸癌、等
N-rasMDS,AML
c-abl-bcr融合mRNACML
PCR−SSCP法:癌抑制遺伝子の点突然変異を検索する
Rb網膜芽細胞腫
WtWilms tumor
P53ヒト腫瘍全般
NF-1神経線維肉腫、横紋筋肉腫
APC家族性ポリポージス
 
 遺伝子組み換えや増幅や突然変異が特定の悪性腫瘍に数多く報告されています。組み換えと増幅は前述した通りサザンブロットで検出できます。臨床の現場で上手に利用されています。また本日は詳しくはお話ししませんが突然変異はPCRによって検出されます。これはサザンブロットが5-10μgのDNAを必要とするのに対し1ng以下のDNAで検査可能です。rasやp53 の突然変異の検出に強力に利用されています。またCMLの際、転座により生じた融合geneからできるc-abl-bcr融合mRNAの検出もできます。これを利用すれば残存腫瘍の有無の検索もできます。すなわち血液をスメアを引いてみた場合には、例えば、1万個、10万個を見るのは大変かも知れませんがPCRでは、100万個の中の1個の異常細胞を検出できます。血液1cc採ってくれば白血球は10の7乗個あります。ですから100万に1個は容易に見つかり残存腫瘍検出には非常に有効に使われています。

 癌遺伝子のリストを参考に示します。

 染色体転座がはっきりとしていて、遺伝子再構成が診断に応用されている代表例を示します。これは診断基準ともなっています。



      講演録に戻る