第2回 特別講演「免疫グロブリン異常症」(21)


21.易動度の変動

 それから、もう1つこういう波形帯を示すものに、しかもslow‐γ寄りに移動するIgGというのは寒天ゲル電気泳動をすると易動度が変わってきます。そういう傾向が強いです。
 特に粗製の寒天ゲルを使って、イオン強度が低いバッファーを使った時には、もともとslow-γ寄りのものがβ分画に近い所にでます。ということは、これは原点に、塗布点に近い所にでてしまいます。これはagarに含まれているアガロペクチンとIgG、M蛋白とが干渉interactionを起こして、もう泳動されなくなるわけです。

 ですから同じ電気泳動なのに何で易動度が変わるんだ? それは電気泳動というのは電気泳動という現象だけではなくて、支持体との干渉、もう1つ電気浸透現象endosmosisとこの3つの物理化学的な性質が総合されて分離されるわけです。このようにslow‐γ寄りのIgG型のM蛋白或はマクログロブリン血症、クライオグロブリンのように非常に巨大分子の異常蛋白が出ているような時には、寒天ゲルの場合には原点に動かないでいる場合が多いということです。

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